研究課題
本研究では、シリコン系半導体において、多元素化と準安定相の実現により、飛躍的な高性能・高機能化が見込まれるシリコンゲルマニウムスズ混晶に着目し、固溶限界を超えるスズ組成を実現する非平衡成長技術の開発と、機能発現の鍵となるドーパントや欠陥終端のための水素などの軽元素局所構造の観測手法の確立を目指している。成長技術開発に関する研究では、前年度までに、アルミニウムとゲルマニウムの合金粒子を含むペーストのシリコン基板上への印刷と短パルスレーザアニールによるシリコンゲルマニウム混晶薄膜の成長実験を実施した。その結果として得られた非平衡成長のプロセス設計指針に基づき、今年度は、ゲルマニウム基板上に固溶限界を超えるスズを含むゲルマニウムスズ混晶薄膜の成長を試みた。レーザ照射条件を変化させた試料を1枚の基板上に形成し評価を行うハイスループット実験を実施した結果、適切なレーザ照射条件では、薄膜成長を示唆する明瞭な体積増加を観測した。成長した試料の顕微ラマンスペクトルでは、ゲルマニウムスズの形成を示唆する明瞭なピークシフトが観測された。さらに、エックス線逆格子マッピングにより、平衡固溶限を超える10%程度のスズが固溶したエピタキシャル膜が形成されたことが実証された。併行して、本研究課題で構築した多検出器系を用いてパラジウム水素化合物を対象とした中性子ホログラフィー実験を、異なる条件で2回実施した。その結果、類似した原子像が得られた。原子像は測定ホログラムのフーリエ変換で得られるが、その実部、虚部を詳細に理論値と比較することで、水素が観測できている可能性が高いことを示すことができた。このような多元素準安定材料の創成技術と軽元素局所構造の観測手法を連携させることで、非平衡組織や準安定相を含む未踏物質における構造と機能の関係の解明につながることが期待される。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 1064 ページ: 169349-169349
10.1016/j.nima.2024.169349