研究課題/領域番号 |
20H00501
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 元雅 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (40321781)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アミロイド / シャペロン / プリオン |
研究実績の概要 |
線維状のタンパク質凝集体であるアミロイドは多くの神経変性疾患の発症や進行に関わる。したがって、アミロイドの生成および脱凝集過程を原子レベルで理解し制御することは重要である。特に、脱凝集過程は生成過程に比べて、アミロイドが細胞にもたらす生理的影響に大きなインパクトを与えることが知られている。つまり、アミロイドの脱凝集過程を調べることは、アミロイド生物学において中心的な課題といえる。しかし技術的な制約のため、シャペロン群が脱凝集過程をどのように制御しているのか、その分子機構には不明な点が多く、過去の研究にも一致した見解は得られていない。本研究では、独自の酵母プリオンSup35の実験系と様々な生物物理学的手法からアミロイドの生成および脱凝集反応を行い、両過程を含むアミロイド伝播を統合的に理解することを目指す。 本年度は、一分子、一線維レベルでタンパク質の動的構造を解析できる蛍光顕微鏡システムを新たに確立し、酵母プリオンSup35アミロイドの脱凝集反応時に、アミロイド線維上で各シャペロンタンパク質が順次、結合・解離する動きを捉えることを試みた。その結果、各シャペロンのSup35アミロイドに対する結合と解離を観察することができた。それによって、効率的、生産的な脱凝集に必要とされる、新たな物理的パラメーターを見出すことができると示唆された。加えて、分析用超遠心機や原子間力顕微鏡、遠心実験からのタンパク質解析法から、Sup35モノマー、アミロイドと各シャペロンタンパク質との会合、脱凝集に関する構造的知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アミロイドの生成・脱凝集を解析するための複数の技術開発とその応用が順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
高磁場核磁気共鳴法(NMR)を用いて、Sup35において各シャペロンが結合する部位の同定を目指す。さらに、15N-Sup35NMモノマーを用いて作成したアミロイドと非ラベルのシャペロンを混合し、遊離してくるSup35NMモノマーのNMRシグナルを経時的に検出、モニターすることで、脱凝集メカニズムをアミノ酸、原子レベルで明らかにすることを目指す。一方で、得られたNMRのデータを補完するため、タンパク質に対するクロスリンカーや酵母を使ったin vivoでの伝播、サイトダクション実験を行い、各シャペロンのSup35結合部位がin vivoでも確認できるか、評価を行う。また、活性が異なる各種Hsp104変異体や異なるアミロイド構造を生成させるSup35変異体を用いることで、アミロイドの脱凝集過程をより詳しく調べる。
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