研究課題
本研究においては、腎臓および全身臓器におけるNAD (nicotinamide adenine dinucleotide)代謝変容のダイナミクスを始めとした申請者のこれまでの研究成果を基に、代謝変容の、腎臓DNA損傷修復環境・エピゲノム変調への関わり、逆に腎臓DNA損傷修復環境に依存したエピゲノム変化の代謝制御への関わりを明らかにすることを目的とした。当該年度においては、MKDにおけるNAD(nicotinamide adenine dinucleotide)代謝破綻とDNA損傷・エピゲノム変調について検討を進めている。すでに申請者はCKD患者の血液、尿におけるNAD代謝産物の変容をLC/MSにて測定する系を確立しておりこれを用いて、CKDにおけるNAD・脂質・アルギニン代謝系と腎機能との関連性について検証を継続しており、腎臓におけるNADの排泄経路に関わる酵素のCKDにおける重要性を明らかにした(Sci Rep in press)。また、最近DKDモデルマウスへのNMN投与により尿アルブミンの改善が認められることを報告した(JASN 2021)が、この成果に基づき今年度は更にヒトへの臨床応用を目指した投与経路や量の検討を継続している。一方、腎臓構成細胞におけるDNA損傷修復による代謝変容への影響に関しては、DNA修復因子KAT5の欠損により、近位尿細管細胞の代謝変容がもたらされることが示唆された(iScience 2021)。腎臓細胞(ポドサイト、近位尿細管細胞)特異的にDNA損傷を惹起する遺伝子改変マウスを用いた検討を継続し、特に近位尿細管上皮細胞におけるDNA損傷が全身の代謝変容をもたらすことが示唆されており、代謝臓器間シグナルを結びつける因子についての解析を継続している。
2: おおむね順調に進展している
それぞれの解析項目において概ね順調に進捗している。
代謝変容の、腎臓DNA損傷修復環境・エピゲノム変調への関わりについての検討に関しては、申請者らが開発した尿検体を用いて非侵襲的に腎臓DNA損傷を評価する方法を用いて、各種MKDモデルにおいてNAD代謝破綻とDNA損傷、エピゲノム変化との関連を検討する。また申請者は、NAD 代謝の中間代謝産物であるNMNの近位尿細管における産生低下がDKDの病態に関与していることを報告しているが、更に最近DKDモデルマウスへのNMN投与により尿アルブミンの改善が認められることを報告した。この成果に基づき今年度は更にヒトへの臨床応用を目指した投与経路や量の検討を行う。一方、腎臓構成細胞におけるDNA損傷修復による代謝変容への影響に関しては、腎臓細胞(ポドサイト、近位尿細管細胞)特異的にDNA損傷を惹起する遺伝子改変マウスを用いた検討を継続し、代謝臓器間シグナルを結びつける因子を、シングルセルRNA-seq解析、DNAメチル化解析の手法を用いて明らかにする。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 7件)
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