研究課題/領域番号 |
20H00548
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
廣畑 聡 岡山大学, 保健学域, 教授 (90332791)
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研究分担者 |
岡田 保典 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任教授 (00115221)
冨田 秀太 岡山大学, 大学病院, 准教授 (10372111)
渡辺 彰吾 岡山大学, 保健学域, 准教授 (20548341)
落谷 孝広 東京医科大学, 医学部, 教授 (60192530)
西田 圭一郎 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (80284058)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メタロプロテアーゼ / microRNA |
研究実績の概要 |
細胞外分泌小胞は細胞から分泌される30-100nmの小胞である。細胞外分泌小胞の内部にはmicroRNAなどが含まれている。最近の研究によって細胞外分泌小胞が細胞間情報伝達機構を担っていることが明らかとなってきた。 細胞外分泌小胞の作用メカニズムとして取り込まれた小胞の内部に含まれているmicroRNAが標的RNAに作用すると考えられるなど、その疾患における役割が注目を集めている。 本研究では、細胞外分泌小胞の表面分子と、取り込む細胞という二つの因子に着目して、それぞれがどのように取り込み機構にかかわっているのかを明らかにする。さらに、組織由来細胞外分泌小胞に着目し、その性質・情報伝達について明らかにする。
2022年度には、細胞外分泌小胞の表面分子をRNA干渉法によって発現抑制したところ、細胞外分泌小胞取り込みの程度が細胞の種類によって差異があることが明らかとなった。
さらに、マウスの性腺周囲脂肪組織および皮下脂肪組織をそれぞれ器官培養をおこない培養上清を回収して濃縮をおこなった後に細胞外分泌小胞の精製をおこなった。さらに、脂肪組織のうちに一定量含まれる脂肪細胞からの細胞外分泌小胞の影響を考慮して、脂肪細胞を取り除いた成分である血管間葉系成分(Stromal Vascular Fracture)を選択的に培養してその培養上清から細胞外分泌小胞を精製する実験を行った。この実験結果から、器官培養をおこなって組織から直接細胞外分泌小胞を回収するよりも、いったん脂肪成分を取り除いた血管間葉系成分(Stromal Vascular Fracture)を培養してその培養上清から細胞外分泌小胞を回収する方がより有効な細胞外分泌小胞を得られることが明らかとなった。さらに、不死化した脂肪組織由来幹細胞を培養し、その培養上清から細胞外分泌小胞を回収する実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞外分泌小胞の表面分子に関する検討により、ある特定の細胞への取り込みが抑制されることを見出した。このことは、ドラッグデリバリーシステムとして細胞外分泌小胞をある目的の細胞へのみ送達させることができる可能性を示唆している。変形性関節症の治療薬を特定の細胞にのみ作用させることが可能となれば副作用の少ない強力な治療の実施へと展開することができる。また、器官培養による細胞外分泌小胞の解析においては脂肪細胞の影響を極力除去することが望ましいと考えて、脂肪細胞を取り除いた分画である血管間葉系成分(Stromal Vascular Fracture)を選択する手法を開発した。この手法では、他のグループからの報告にそん色ない約10%程度の脂肪組織由来幹細胞を含むことをフローサイトメトリー法による解析で明らかにした。今後は、この血管間葉系成分(Stromal Vascular Fracture)から細胞外分泌小胞を精製する手法で研究を進めていく方針である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は細胞外分泌小胞の表面分子の作用で見出した効果がin vitroのみでなく、生体内でも実際に起こるのか、すなわち細胞選択性を示すことがあるのかについて動物実験を用いて実施することを検討している。
次に、血管間葉系成分(Stromal Vascular Fracture)の選択的培養実験系を用いて、細胞外分泌小胞を精製して細胞への効果を種々検討する。 同時に不死化脂肪由来幹細胞の培養系から得られる細胞外分泌小胞による、細胞への作用を検討する。細胞に対する作用の違いが細胞外分泌小胞の内包されている成分の違いによるものか、それとも表面分子の違いなのかについても着目しつつ研究を推進していく計画である。
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