研究課題/領域番号 |
20H00620
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
関嶋 政和 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (80371053)
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研究分担者 |
稲岡 健ダニエル 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (10623803)
庄司 満 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (30339139)
平山 謙二 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 教授 (60189868)
樺島 祥介 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80260652)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | AI創薬 / 抗規制原虫薬 / 機械学習 / ロボット |
研究実績の概要 |
標的タンパク質に対してヒット化合物が得られた後の創薬のプロセスの一つである化合物最適化では、特定のヒット化合物を出発点として物性を改善したより薬らしい化合物の探索を行う。機械学習を利用した化合物生成モデルの一つであるChemTSは優れた物性を持つ化合物を生成することに成功したが、特定の化合物を出発点とした化合物生成には対応していなかった。創薬では、HTSなどの実験で得られたヒット化合物の標的タンパク質への結合能や物性を改善し、薬様化合物に最適化していくため、本研究では化合物をSMILES形式で表現した上でモンテカルロ木探索を用い、特定の化合物の誘導体を生成することが可能な手法を開発した。本手法について化合物の薬らしさの指標であるQEDを最適化する実験を行った結果、平均QEDが0.63の化合物群に対して0.93を超える化合物を生成することに成功した。一方で、SMILESは生成モデルでは一般的に使われる表現ではあるが、我々の研究から最適化のためのSMILESの文字列の挿入や削除により、母核を明示的に保護しない場合、ヒット化合物からの類似性が極端に損なわれることがあることが分かった。このため、化合物最適化の為にはSMILES表現ベースではなく、グラフ表現ベースの方がより適切ではないかと考えるに至っており、現在、化合物最適化においてグラフ表現ベースの最適化手法について開発を進めている。また、ウェットの実験を行う分担者との連携を重ね、機械学習による化合物生成、生成された化合物のウェット実験での化合物の合成、アッセイ試験という流れについてそれぞれ実験可能な状況になってきていることの確認を行うことが出来た。今年度は、情報処理学会第84回全国大会で学生奨励賞、情報処理学会第69回バイオ情報学研究発表会において2件のベストプレゼンテーション賞受賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械学習手法について、第一段階ともいえるヒット化合物からの最適化手法が完成している(Erikawa et al., J.Chemoinformatics,2021)。其の上で、更によい化合物生成手法についての方法論についての目途が立っているころ。さらに、標的タンパク質についての議論を行い、ヒット化合物の選定について進んでいることなど、AIと実験が相互補完するところまでの下準備が整ったこと。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、化合物生成モデルについては、SMILESと呼ばれる化合物の表現においてヒット化合物からの最適化手法の構築を終えることが出来ており(Erikawa et al.,2021)、この経験から、化合物の生成においては複数の評価関数の最適化を行っていく必要性があると考えており、今後実装を進めていきたい。今年度は、特に化合物の生成モデルについてはドッキングスコアやQEDという複数の評価関数の最適化を行うことが出来る化合物の生成モデルの開発を行う。その上でウェット実験での合成とアッセイ試験での評価を目指していく。 最終的な目的である、機械学習を用いた候補化合物を生成する生成モジュール、活性予測モジュール、物性・毒性予測を行う評価モジュールの開発、これらの予測に基づいたロボットによる化合物自動合成手法の確立、抗寄生原虫活性・毒性評価実験系の確立のうち、複数のものについて今年度組み合わせた実験の実施について推進を行う。
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