研究課題/領域番号 |
20H01277
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西垣 知佳子 千葉大学, 教育学部, 教授 (70265354)
|
研究分担者 |
安部 朋世 千葉大学, 教育学部, 教授 (00341967)
池田 周 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (50305497)
物井 尚子 (山賀尚子) 千葉大学, 教育学部, 教授 (70350527)
水本 篤 関西大学, 外国語学部, 教授 (80454768)
星野 由子 千葉大学, 教育学部, 准教授 (80548735)
小山 義徳 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90546988)
石井 雄隆 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90756545)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | データ駆動型学習 / data-driven learning / DDL / 探究的な学習 / 主体的・対話的で深い学び / 帰納的学習 / 気づき / 語彙・文法学習 |
研究実績の概要 |
コロナ禍が続く中,2021年度は急速にGIGAスクール構想が進展し,学校での「1人1台端末」とWi-Fi整備が進み,DDL普及の環境が整った。このことからDDL支援ツールを発展させ,DDLツールの海外展開の足がかりを作った。以下に実績を報告する。 (1)DDL支援サイトに「文法クイズ・サブツール」を追加した。これは,英文法の知識の習得に関わる到達度や弱点をチェックするもので,学習者が単語の並べ替え問題を解くことで,英語の語順や文構造に自然と意識が向くようになっている。クリックとドラッグ&ドロップだけの簡単な操作で,遊びながら楽しく学べるため,学習者からの評価も高く,アクセス数も多い。 (2)DDL支援サイトに搭載するコーパスを拡大した。まず,中・高生用サイト(hDDL)が扱う文法項目を追加し,そのうえでコーパス全体の教育用例文を追加した。その結果,これまで以上に多様な文法項目と英文用例に触れられるようになった。 (3)コロナ禍がおさまってきた状況から,DDL実践を再開した。小規模校での実践,帯活動としての実践等を行い,どのようにして学習者に英語の文構造に気づかせるかの方法,授業で定期的にDDLを活用する方法,DDLを授業中に手際よく,効果的に行う方法等を検討した。 (4)今後の国際展開を見据えて,日本語利用のDDL支援ツールに,英語のみで学習を進められる英語話者用hDDLを公開した。併せて,2020年度に公開したBES Search (Basic English Sentence Search)を海外の研究者や英語教師が利用できるように,英語を使って操作できる英語版を公開した。BES Searchは,約133万7000文、約1,075万語の用例を自由に検索できるコーパス検索アプリである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,データ駆動型学習(data-driven learning:DDL)ツールを開発し,英語の運用力と語彙・文法力をバランスよく育成する指導の推進と,DDLの普及を目指す。これまでに小学生用ツール(eDDL),中高生用ツール(hDDL),大学生用ツール(SCoRE),入門期レベルの英文コーパス検索サイト(BES Search)を公開した。2021年度当初は,(1)文法力診断サブ・ツール「文法チャレンジ」の新規追加,(2)DDLツールの強化,(3)DDLを使った学習効果の検証という3つの目標を立てた。そのうち,(1)と(2)は順調に進行したが,(3)はコロナ禍の影響で予定よりも遅れた。その一方で,年度当初にはなく,あらたに進んだこととして,(4)今後の国際展開を視野に入れ,英語だけで操作できる英語版DDLツールの開発と公開ということが挙げられる。以下に詳細を述べる。 (1)文法力診断用サブ・ツールの新規追加:hDDLに3つ目のサブ・ツールとして,文法知識の定着度を確認できる自学自習用ツールを加えた。特徴は,クリックとドラッグ&ドロップの操作で利用できる,語順に意識を向ける,ゲーム感覚で学べるという点である。 (2)DDL支援ツールの強化:hDDLに,「命令文」「文のかたち」等のあらたな文法項目を追加した。また,既存の教育用コーパスに英語・日本語併記の教育用例文を600文以上追加し,これまで以上に多様な構文と例文に触れられるようにした。 (3)DDL支援サイトを使った学習効果の検証:2021年の夏以降コロナ禍の状況が悪化したため,一部の公立中学校での実践を2022年に持ち越し,予定していた実践を終えた。 (4)英語版ツールの開発と公開: hDDLとBES Searchについて,今後の海外展開の土台となるように,英語だけで利用できる英語版を公開した。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度,小学校・中学校ではGIGAスクール構想の進展により「1人1台端末」が広まり,学校や自宅でいつでも自由にDDLツールを利用できる学習環境が整ってきた。また,高校でも徐々にICT利用の環境が整いつつある。さらに,2022年度には高校1年生で新学習指導要領の適用が始まり,これまで以上に思考力・判断力・表現力を育てる指導が広がっていくであろう。外国語教育の環境が大きく変化する中,DDLはICTを利用し,児童・生徒が主体的・対話的に深く学び,自分の考えを言語化して表出していく,現代社会の要請に合致する指導手法であると言える。以上を踏まえ,本研究の今後の推進方策について3つの観点から述べる。 (1)本研究全体の方針:語彙・文法力というと,従来型の指導では,知識の定着に目が行きがちであった。DDLでは,思考力・判断力・表現力の育成,また学びへの積極的態度の育成にも注目して研究を推進していきたい。 (2)オンラインツールの開発方針:あらたに音韻に対する気づきを引き出すためのツールを開発・公開する方針である。併せてその指導方法について検討する。 (3)思考力・判断力・表現力,ならびに学びに対する積極的態度の育成の方針:入門期DDLツール(eDDL),初級用ツール(hDDL)の利用をとおして,言語データ(コーパス)を見て,語彙・文法の規則性を自ら発見し,言語化できるような主体的・対話的で深い学びを入門・初級レベルのうちから行いたい。また,将来自律した外国語学習者となれるように,コーパスに慣れ親しみ,コーパス活用に対するハードルを下げ,オンライン上で多様なコーパス・ツールを積極的に活用していくような学習態度とスキルを育てたい。すなわち,DDLを通して自律して言語を観察する視点を育み,言語に対する疑問を持ったときに,適切なコーパスを使って自力で問題を解決できる言語学習力の育成を目指す。
|
備考 |
全てのサイトが無料で,登録不要で利用できる。また,搭載されている英文は,著作権フリーで利用できるので,学校で,自宅で,英語教師,児童・生徒,一般の英語学習者が利用できるDDL学習支援ツールである。
|