研究実績の概要 |
本研究は若手研究B「言語統計解析モデルに基づく英語語彙指導の最適化」(17K13512) の発展課題である。研究の目的は,様々な英語語彙指導法をデータベース化し,学習者の適性に応じて学習成果を最大化する支援システムを構築することであった。具体的には,どのような学習者がどのような英語語彙指導法に対して最も高い学習効率を示すのか (適性処遇交互作用) をメタ分析により明らかにしようとした。さらに,最適な指導法に学習者を割り当てるための心理尺度による診断システムをデータベースに統合する予定である。
2022年度は,どのような英語語彙指導法がどの学習者に対して効果的なのかを対応付けるための心理尺度を開発することに着手した。Finch and French (2018)による心理尺度の開発手順に則り,英語語彙学習の成果を左右する学習者要因を測定する既存の心理尺度を包括的に収集し項目バンクとした (e.g., 学習方略:Gu & Johnson, 1996;言語適性:Robinson, 2002;動機:Tseng & Schmitt, 2008;不安:Horwitz, Horwitz, & Cope, 1986)。さらに,心理尺度の構造検証として,質問項目が測定したい因子それぞれを反映していることを構造方程式モデリングにより検証した。項目応答理論を用いて学習者の特徴を適切に識別できる項目を抽出し,項目バンクから測定上頑健な質問項目を精選した。最後に,心理尺度の妥当化として,心理尺度により数値化される学習者の個人差が,学習者の実態を適切に反映していることを論証に基づく妥当化 (Kane, 2006) の枠組みで証明することを試みた。
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