研究課題
本研究の目的を達成するためには、現物資料の調査が必要不可欠である。しかし、残念ながら採択当初から、新型コロナウイルス感染症により国内・国外ともに移動が制限され、資料調査の機会を得難い状況が長く続いた。このため、科研費の繰越制度を利用して2カ年の繰越(繰越および事故繰越)を申請していずれも認められた。2020年4月から1年半は、オンラインやメーリングリストによって、情報の収集と共有を随時行いつつ各自で研究を進めた。これらの情報を基に、メンバー各自で資料の写真や録文に基づく調査対象資料の選定、過去の関連研究の検証、必要な機器・機材の準備・メンテナンスと予行演習を行った。2021年11月には、、九州国立博物館において文化庁や同博物館が所蔵する東アジア関係古文書について、内容・形態・料紙などの詳細な調査を行った。この調査は、当該研究メンバーでの初めての調査であったため、料紙調査の手法・技術についてメンバー内での周知をはかり、結果に基づいて爾後の調査の手順・方法を再検討するという意味も有した。同じく2011年11月には、「オンライン連続講座『知の継承(バトン)』2021年度第1回講座」の開催に協力した。この催しは研究代表者の本務機関等が主催する一般向けの催しである。研究代表者による講演に引き続き、代表者と研究分担者1名とが対談形式で「歴史史料をモノから読み解く : 何に情報を記すのか」をテーマに討論し、一般からの質問に直接回答した。これらの内容は当該科研費による研究成果を踏まえたものであって、研究成果の社会還元の新たな形として特筆できよう。また、オンライン研究会を随時に開催し、メンバー全員が順次研究発表を行い議論を深めたほか、研究分担者1名と研究代表者が、国際学会(オンライン開催)にて学術発表を行ったが、ここには本科研の成果を踏まえた料紙調査の方法論についての内容を含んでいる。
4: 遅れている
本研究の目的を達成するためには、現物資料の調査が必要であり、特に欧州に所蔵される敦煌文献・吐魯番文書の調査が欠かせない。しかるに、本研究開始当初から新型コロナウイルス感染症の拡大による移動制限があった上、2022年2月からはロシアのウクライナ侵攻に伴い渡航可能な国がさらに限定されてしまった。本研究ではロシアに所蔵される文書も調査対象としていたことから、内容の大幅な見直しが必要となった。さらに、円安の進行と世界的な物価高騰の影響から当初積算した金額では予定通りの調査が不可能になってしまった。このため調査機関の変更や調査日程の縮小、あるいは調査人数の削減などの変更・調整を余儀なくされた。国内においては、少なくとも2023年3月までは新型コロナウイルス感染症の影響がまだ残っており、3密回避などの必要から複数人からなる共同での調査受入に制限のある機関が多く、調査実施の足かせとなった。以上のような外的な理由に加えて、2022年後半から研究代表者が病気療養したことにより全体の遅れが加速した。
海外調査は継続中のフランス国立図書館に絞ることとし、事前に調査対象資料の情報を綿密に調べた上で絞り込み、短期間で効率的な調査ができるように工夫したい。国内調査については、研究代表者・研究分担者の本務校がある関東もしくは関西になるべく限定して行い、時間的な効率化と財政的な負担の軽減を図るものとする。研究成果の発信・公表については、コロナ禍において試みられ蓄積されたオンラインによる様々な手法を駆使して、同様に効率化と財政的な負担軽減を試みる。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うちオープンアクセス 5件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 図書 (6件) 備考 (1件)
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