研究課題/領域番号 |
20H01316
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
下村 周太郎 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (40581822)
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研究分担者 |
尾上 陽介 東京大学, 史料編纂所, 教授 (00242157)
高木 徳郎 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (00318734)
三上 喜孝 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (10331290)
西尾 知己 関東学院大学, 国際文化学部, 准教授 (20453996)
似鳥 雄一 高千穂大学, 商学部, 准教授 (30719521)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本古代史 / 日本中世史 / 寺院史 / 地域史 / 荘園史 / 村落史 |
研究実績の概要 |
本研究は、旧大和国宇智郡栄山寺領(現・奈良県五條市)の歴史的景観復元と、栄山寺文書の文書群復元とによる、栄山寺に関する総合的歴史研究である。前者に関しては、現地において水利などの調査を行う予定であったが、本年度も新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、長距離移動を伴う大人数での出張や、対面・接触での聞き取り調査が実施が容易ではなかった。そうした中で、8月に、平安期に栄山寺領が展開した重坂条・佐味条故地(旧・宇野村・三在村・住川村など)において、実際の地形や水路、耕地の状況に即して条里を復元するための現地調査を行うことができ、一定の成果を得ることができた。また、初年度以来、現地調査が困難になったことの代替措置として調査を進めている地籍図については、前年度までに調査をしていた五條市役所税務課所蔵のものだけでなく、奈良地方法務局五篠支局所蔵のものも確認することができ、当該地域における旧公図の作成・伝来状況について、全貌が把握できつつある。後者に関しては、8月に国立歴史民俗博物館所蔵の栄山寺文書やなら歴史文化芸術村で修理中の栄山寺所蔵文書を閲覧する機会を得、そこでの知見も踏まえつつ前々年度・前年度から引き続き『五條市史』などの校訂を進めた。また、一乗院文書(二条家文書)などに含まれる栄山寺が所見する史料について翻刻を進めた。12月と2月には他の共同研究との共催で研究会を実施することができ、栄山寺文書に見える坪付のデータ化や栄山寺境内が所在する小島村周辺での条里復元などについて討議を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までと同様に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、当初計画していた現地での水利などの調査や、対面・接触を伴う聞き取り調査は十分に行うことができなかった。そのかわり、歴史的景観復元の史料となる近代初期に作成された地籍図や字切図などの調査は進めることができている。前年度までに調査をしていた五條市役所税務課所蔵のものだけでなく、奈良地方法務局五篠支局所蔵のものも確認することができ、当該地域における旧公図の作成・伝来状況について、全貌が把握できつつある。また、文書史料の調査についても、栄山寺や国立歴史民俗博物館、陽明文庫など各所に所蔵されている栄山寺文書に関して、原本の熟覧や高精細デジタル画像の確認を通じて、校訂・分析を進めることができている。前年度から調査を進めている、栄山寺から流失したと思われる旧蔵文書や他の寺院所蔵史料で栄山寺が所見する史料について翻刻などの作業を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も前年度までと同様、新型コロナウイルス感染症の蔓延が尾を引いており、一定の規制が残る中で、当初計画していた聞き取りなど人と人との接触を伴うような大掛かりな調査は、十全に実施することができなかった。研究期間内に栄山寺旧領全域を対象とした全面的な調査は実現が難しい状況にある。そうした中で、栄山寺境内と近接している重坂条・佐味条・河南三条故地(旧小島村・宇野村・三在村・住川村・牧村・野原村など)にある程度重点を絞り、感染状況などを注視しつつ、適宜調査を実施することで、所期の目的をある程度達成できればと考えている。現地調査が十全にできない場合であっても、前年度までに高精細デジタル写真撮影をしデジタルデータ化ができたり、コピーを入手できた地籍図や字切図について、GISソフト上で現在の地形図と統合することで、歴史的景観復元の作業を進展させたい。また、高精細デジタル画像だけでなく原本による栄山寺文書の本文校訂を、やはり感染状況などに留意しつつも、可能な限り実施していきたい。そのほか、『五條市史』未収録の栄山寺関係史料についても引き続き収集を行っていく。
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