研究課題/領域番号 |
20H01502
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
後藤 康雄 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (00571192)
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研究分担者 |
照山 博司 京都大学, 経済研究所, 教授 (30227532)
川崎 能典 統計数理研究所, モデリング研究系, 教授 (70249910)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 企業ダイナミクス / 中小企業政策 / ゾンビ企業 / 中小企業 / コロナショック |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画の第二段階として、昨年度に収集・検討した各種データ、政策情報、統計手法に基づいて、実際のデータ分析を行った。まず、企業ダイナミクスの各フェーズについて、社団法人CRD協会の中小企業財務データベースにおける設立年等の情報を活用した統計解析を進めた。さらに、COVID-19感染拡大を鑑み、昨年度に検討した集計データとして、政策金融関連のデータ整備やそれを用いたプレリミナリーな分析(疑似パネル化したデータによる時系列分析やパネル回帰等)を行った。 また、コロナショックにより刻々と変化する情勢下、引き続き多様な中小企業支援策が講じられており、その情報収集を続けるとともに、それらを経済分析の俎上に乗せるための整理(支援の性格、目的、位置づけ、経緯等)を行った。そのための文献調査のほか、政策関係者、中小企業経営者等の関係者への聞き取りも積極的に進めた。これらは、直接的に、次年度に行う予定の独自アンケート調査の基礎情報となる。 さらに、統計手法の精緻化を進め、上記のデータ分析に適宜応用した。近年様々な方向に発展している内生性や因果性を考慮する手法をはじめ、その基礎理論の整理や手法を実装した統計ソフトの検討を進めた。コロナ禍のもと、ミクロデータのみならず現実的な利用可能性が高い集計データを積極的に活用すると昨年度に決めた方針に沿って、時系列分析の応用(パネル型グレンジャー因果性検定等)を現実のデータに応用した分析も進めた。 以上の研究活動を通じて得られた知見や成果は、学術論文誌としてとりまとめ投稿したほか、有力メディア(日本経済新聞「経済教室」等)を通じて社会への発信も積極的に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍という不測の事態に対応する形で、すでに昨年度から、(i)コロナショックに関連する事象や政策を分析に取り込む、(ii)集計データも積極的に活用する、などの方針に沿って、当初計画の趣旨を崩さない範囲で柔軟に研究を進めてきたが、今年度も昨年度までの準備を基礎に据え、全体としてみればおおむね順調な進捗であった。すでに中間年度の段階で複数のジャーナルへの投稿(フィナンシャル・レビュー等)や社会への発信を実現できたのは、計画全体をやや先取りしている部分もある。 もっとも、やはり先が読めない新型コロナの感染状況のため活動が制約された面もある。もっとも厳しいかったのは、県境をまたぐ出張がほとんど出来ず、実地調査による機微に触れた生の情報を得る機会が非常に限られたことである。これはデータ分析や文献情報で適宜補ったものの、限界があったため、今年度中の実施を計画していたアンケート調査の設計に支障(調査項目の設計や調査対象の検討等)をきたしたことなどの事情から、調査は次年度に延期することを余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度にあたるため、これまで得られた成果や情報を最大限活用し、また足りない部分を補う形での総括的なとりまとめの段階となる。特に、コロナ禍を経て一段と強まった、中小企業支援による成長力への影響はさらに情報・データを拡充し、手法も検討の上、分析を行う余地がある。 また、独自アンケート調査の大枠はすでに固まっているなか、コロナ禍の影響により積み残しとなっている細部の詰めを終え、同調査を実施して、得られたデータを用いた統計解析を行う。さらに、依然として先行き不透明な新型コロナをめぐる中小企業支援に関する政策情報の収集に努め、適宜政策当局とも連携する形で分析結果の解釈の精緻化を進めるとともに、学術的媒体、マスメディア、インターネット等の幅広いチャネルを通じて、社会的な訴求力のある情報発信を行う。
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