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2022 年度 実績報告書

何が移民の職業移動を妨げるのか:日伊のペルー移民をめぐる構造・集団・主体的条件

研究課題

研究課題/領域番号 20H01572
研究機関早稲田大学

研究代表者

樋口 直人  早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00314831)

研究分担者 稲葉 奈々子  上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40302335)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード移民 / イタリア / ペルー / 社会移動 / 社会統合 / 非正規移民
研究実績の概要

今年度は、それまでの遅れを取り戻すべく、7-9月、12-1月、2-3月の3回、約120日間のイタリア調査を実行した。これにより、487人のペルー移民(それ以外に1名のエクアドル移民、2名のベネズエラ移民)に対して聞き取りをおこなった。昨年度の調査から新たに加える知見は以下の通りである。
1.2022年には大統領が何度も交代するなど、ペルーでは政治的混乱が続き、経済的状況も悪化している。それに敏感に反応する形で、イタリアへの移民フローが生じている。しかしこれは、中流階級がペルーから避難して日本へ渡航した1990年前後とは異なり、下層階級への広がりをみせている。これは、ペルーからビザなしでもイタリアに入国できること、スペインよりはイタリアの方が仕事があること、下層階級でも貯蓄は可能な程度にペルーの経済状況は悪くなかったこと、あるいはイタリアへと呼び寄せるネットワークが発展していることによる。
2.全体に、日本のペルー移民よりも階層が低い。これは前段の事情にもよっているが、経済危機以前からイタリアのぺルー移民の出身階層は低かった。先行研究では、山岳部出身者が多いとされており、それ自体は間違いではないが、より多いのは山岳部-Lima-イタリアという流れであり、Limaの貧困地区からの渡航が一番多い。
3.イタリアのぺルー移民の経済状況は、客観的には日本のペルー移民よりずっと劣悪である。キリスト教系NGOの無料飲食所で食事を済ませる者も多く、個室ではなくベッドだけ借りるポストレットに居住し、安定した仕事についても1000ユーロ程度の月収である。しかし、もとの出身階層が低いことにより、そうした生活にも耐えることができている。イタリアではビザの正規化の可能性があるため、正規化により安定した仕事を得られれば、所得は低くともペルーよりはよい生活ができるという見込みにより流入が続いている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2021年12月から調査が可能になり、それ以降は5回イタリアでの調査を実行した。その結果、申請書に記した400人という目標人数を現時点で突破し、487人まで到達した。最終年にも調査を続ければ700-800人程度には聞き取りが可能であることから、調査は順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

最終年度は、予算の制約により夏期に2ヶ月間の調査を行うにとどめる。それによりデータを揃えることができるが、本格的な日伊比較の前に既に行った日本のペルー移民に対する調査のデータを解析して、発表していく(すでに関東社会学会では報告エントリー済み)。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 移民政策をめぐる連立方程式――特定技能に至る経路から考える2023

    • 著者名/発表者名
      樋口直人
    • 雑誌名

      グローバル・コンサーン

      巻: 5 ページ: -

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 2021年入管法廃案と仮放免者―「存在しない人たち」が動かした社会運動2023

    • 著者名/発表者名
      稲葉奈々子
    • 雑誌名

      グローバル・コンサーン

      巻: 5 ページ: -

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 夢を持てない国・日本2022

    • 著者名/発表者名
      樋口直人
    • 雑誌名

      部落解放

      巻: 829 ページ: -

  • [雑誌論文] コロナ禍で困窮する外国人と反貧困運動による社会への包摂2022

    • 著者名/発表者名
      稲葉奈々子
    • 雑誌名

      人権と部落問題

      巻: 74 ページ: -

  • [雑誌論文] コロナ禍の非正規滞在外国人と貧困2022

    • 著者名/発表者名
      稲葉奈々子
    • 雑誌名

      社会福祉研究

      巻: 143 ページ: -

  • [学会発表] ダイバーシティは不平等を推進するのか、是正するのか:移民研究の立場から2023

    • 著者名/発表者名
      樋口直人
    • 学会等名
      社会学系コンソーシアムシンポジウム 「ダイバーシティ推進と日本社会の<不平等>」
    • 招待講演
  • [学会発表] オートエスノグラフィーとは何か2023

    • 著者名/発表者名
      樋口直人
    • 学会等名
      シンポジウム「オートエスノグラフィーから見る移民の物語:日本を生きる10人の語り」
  • [学会発表] Resistance of Detainees and Colonialist Rule in Immigration Detention Centers2023

    • 著者名/発表者名
      Nanako Inaba
    • 学会等名
      IMISCOE spring conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 移民とナショナリズムをめぐる日本的構図:移民受入れをめぐる3つの論理の変遷2022

    • 著者名/発表者名
      樋口直人
    • 学会等名
      日本社会学会
  • [学会発表] 「遠くて遠い国」と「近くて遠い国」の間――日本のオリエンタリズム、ポストコロニアリズムと排外主義2022

    • 著者名/発表者名
      樋口直人
    • 学会等名
      日仏会館シンポジウム「日仏におけるイスラームと政治的・社会的価値観」
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Developmentalism vs Clientelism: Which Can Better Explain Japan’s Immigration Policy?2022

    • 著者名/発表者名
      Naoto Higuchi
    • 学会等名
      IMISCOE Annual Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 開発主義vsクライエンテリズム-どちらが日本の移民政策を説明できるのか2022

    • 著者名/発表者名
      樋口直人
    • 学会等名
      関東社会学会
  • [学会発表] 移民政策をめぐる連立方程式――特定技能に至る経路から考える2022

    • 著者名/発表者名
      樋口直人
    • 学会等名
      シンポジウム「検証・日本の移民政策」
  • [学会発表] 2021年入管法廃案と仮放免者―「存在しない人たち」が動かした社会運動2022

    • 著者名/発表者名
      稲葉奈々子
    • 学会等名
      シンポジウム「検証・日本の移民政策」
  • [学会発表] ジェンダーと人権―「日本に存在しないはず」とされる女性たちの声2022

    • 著者名/発表者名
      稲葉奈々子
    • 学会等名
      団世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会女性部会40周年記念事業Action with All Beings―すべての声なき声に寄り添う
    • 招待講演
  • [図書] ニューカマーの世代交代:日本における移民2世の時代2023

    • 著者名/発表者名
      樋口直人・稲葉奈々子編
    • 総ページ数
      232
    • 出版者
      明石書店

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公開日: 2023-12-25  

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