研究課題/領域番号 |
20H01704
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野呂 文行 筑波大学, 人間系, 教授 (30272149)
|
研究分担者 |
高橋 甲介 長崎大学, 教育学部, 准教授 (10610248)
高浜 浩二 作新学院大学, 人間文化学部, 教授 (40616299)
登藤 直弥 筑波大学, 人間系, 助教 (70773711)
佐々木 銀河 筑波大学, 人間系, 准教授 (80768945)
丹治 敬之 岡山大学, 教育学域, 講師 (90727009)
半田 健 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (90756008)
松田 壮一郎 筑波大学, 人間系, 助教 (90762675)
青木 康彦 聖学院大学, 人文学部, 助教 (90911347)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 自閉スペクトラム症 / 応用行動分析学 / 好みのアセスメント |
研究実績の概要 |
第一に、自閉スペクトラム症における個人プロフィールと多刺激非置換提示法(multiple stimulus without replacement:MSWO)の結果の関連性については、現在、18名の対象者に対して、発達検査等の個人プロフィールの把握と、それぞれの好みを把握するためのMSWOの実施を行っており、2022年度には、当初の対象者についてはすべてのデータ収集が終了する予定である。 第二に、特別支援学校と特別支援学級の教員に対する児童生徒の好みの把握とその活用に関する実態調査については、データを収集し終えた。結果としては、1)多くの教員が、子どもの好みを把握することを肯定的に捉え、好みを様々な方法で頻繁に把握しようとしている、2)好みの活用法として、強化子として活用している教員は少ない、3)好みを把握していない回答した教員の多くは、好みを把握する具体的方法が分からないということを理由として挙げている、等が明らかになった。 第三に、現職教員及び教員志望の大学院生を対象に、MSWOによる好みの把握のためのアセスメント手続きの研修プログラムの効果の検証を実施した。3名の対象者に対して、ビデオ・モデリングを中心とした研修プログラムが効果的であり、実際の自閉スペクトラム児童への適用に関する般化効果も確認できた。 第四に、MSWOと対刺激提示法(paired stimulus preference assessment:PS)による好みの把握に関する比較検討の研究を実施した。その結果、MSWOでは、最も好みが高い刺激と最も好みが低い刺激が安定して示されていたが、PSでは、最も好みが高い刺激と最も好みが低い刺激がセッションにより変わり、変動性がみられた。2つのアセスメント手続きの効果と限界について、更なる検討をする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的のひとつである「自閉スペクトラム症の個人プロフィールと好みのアセスメントの関連性」については、4年間での実施を想定していたが、2022年度にはほぼすべてのデータが収集し終わる状態にある。また特別支援学校と特別支援学級の教員に対する児童生徒の好みの把握とその活用に関する実態調査については、データ収集を終え、学術雑誌への投稿の準備を進めている。この調査を通じて、我が国の特別支援学校・特別支援学級教員において、好みの把握のための方法の必要性を把握できていた点も研究の進展として大いに評価できる。さらに、好みのアセスメントに関する教員研修プログラムに関しては、3名という限られた対象者ではあるが、好みのアセスメント方法を研修するためのプログラムの開発に関する基礎的データを収集することができていることも当初の計画以上に進展をしていると評価する理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは「自閉スペクトラム症の個人プロフィールと好みのアセスメントの関連性」については、2022年度において、当初予定された18名の対象者に関して、前年度に引き続き、発達検査等の実施を通じた個別プロフィールの調査と、個々の対象者に対する好みのアセスメント評価(MSWO)を実施する。2022年度において、予定された18名のデータ収集を終える予定である。さらに対象者を追加して研究を実施するかどうかについては、今年度中に検討する。また好みのアセスメント方法に関する教員研修プログラムに関しては、2022年度においては、遠隔地の教員や教員志望の学生を対象としたプログラムの立案とどの効果の検証を実施する計画である。研究代表者の勤務する筑波大学において研修プログラムを実施するが、その対象者は。研究分担者の所属する大学の学生あるいはその大学の近隣の学校の教員とする。2021年度の対面での研修プログラムの内容に準じて行うことを計画しているが、遠隔地に対するオンライン研修プログラムであることから、その特性を活かした内容に修正をした上で実施する予定である。また昨年度から実施している社会的刺激に関する好みのアセスメント研究のシステマティック・レビューにおいて、対象論文の選定が終了したので、これからは該当論文の内容を調査し、結果をまとめることを計画している。
|