研究課題
本研究では、宇宙暗黒物質の候補としてニュートリノ質量起源を説明する新粒子である質量が数10keVの右巻きニュートリノを想定し、この粒子の実験検証について探究している。この暗黒物質に対しては、崩壊から生じるX線を宇宙観測による探索、宇宙の比較的小規模構造を探るLy-alpha観測、また天の川銀河を取り巻く衛星銀河の観測等から厳しい制限を受けている。現在、30から40keVの質量を持ち、混合角が10のマイナス14乗と非常に小さい右巻きニュートリノが許されている状況である。このような背景のもと、対象となる暗黒物質を地上実験でいかに検証するか検討を進めた。具体的には、右巻きニュートリノと原子核に束縛された電子が衝突し、電子が得る反跳エネルギーをシグナルとした直接検出法に着目した。自由電子と異なり、原子内の電子は束縛の効果により右巻きニュートリノとの反応率が変化する。そこで、通常の電子型左巻きニュートリノを対象として、Roothaan-Hartree-Fock近似を用いた原子内の電子分布を用いて、散乱断面積が核種によってどのように変化するかを把握した。これらの結果を用いて、天の川銀河内に分布する右巻きニュートリノ暗黒物質の検証可能性を検討した。暗黒物質は天の川銀河内でランダムに運動し、Maxwll速度分布に従っているとして評価を進めた。通常の左巻きニュートリノと異なり、右巻きニュートリノは無視できない質量を持つため、反応の運動学が異なることに注意して解析を進めた。特に、暗黒物質起源の電子の反跳エネルギーのスペクトル、およびそのシグナル強度に対して数値解析を行った。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of High Energy Physics
巻: 2023 ページ: 62 (11pages)
10.1007/JHEP07(2023)062