研究実績の概要 |
超大質量ブラックホールの成長メカニズムを理解する鍵となるのが、ブラックホールへのガスの供給源である「トーラス」と呼ばれる構造である。活動銀河核のトーラス構造を解明するため、前年度に完成させたクランピートーラスからのX線スペクトルモデル(XCLUMPY)を、近傍宇宙の隠された活動銀河核(2型AGN)10天体に適用した。その結果、X線から推定されるトーラスの立体角は、赤外線から推定される値より系統的に小さいことがわかった(Tanimoto, Ueda et al.)。 XCLUMPYモデルを、高空間分解能赤外線観測データの存在する計28の活動銀河核に当てはめた。このサンプルは、隠されていない活動銀河核(1型AGN)も含み、同種の研究が行なわれたサンプルとしては過去最大サイズである。1型AGNと2型AGNの両方について、X線と赤外線の結果を比較することで、トーラスの極方向にダストの多いアウトフロー成分が存在する示唆を得た。これらを元に、「活動銀河核統一モデル」を更新した(Ogawa, Ueda et al.)。 「すばる」XMM-Newton深サーベイ領域のX線探査で検出された赤方偏移 1.18-1.68にある活動銀河核について、Herschel 衛星による遠赤外線データを含めた多波長スペクトルエネルギー分布を整備した。それに対し、最新の銀河および活動銀河核の放射モデル(CIGALE)を当てはめ、星生成率と星質量を求めた。その結果、これらが星よりもブラックホール成長が支配的な種族であることをつきとめた(Setoguchi, Ueda et al.)。
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