研究実績の概要 |
超大質量ブラックホールの質量供給メカニズムを理解するためには、活動銀河核(AGN)トーラスの位置(ブラックホールからの距離)を知ることが重要である。X線は、ガスとダストを含んだ全物質を追跡できるという特徴がある。我々は、XCLUMPYモデルを改修し、クランピートーラス中のケプラー運動を考慮して、蛍光輝線のプロファイルを予言した。これを、Chandra衛星搭載HETG装置で得られた Circinus Galaxyの深いデータに適用することで、トーラス内縁半径をこれまでで最も正確に求めた。その結果、ダストの豊富なトーラスのより内側に、ダストのないガスが大量に存在することがわかった(Uematsu, Ueda et al.)。 銀河合体は、超大質量ブラックホール成長の重要なパスの一つである。我々は、銀河合体により爆発的な星形成を起こしている超/高光度赤外線銀河(U/LIRG)に着目した。近傍宇宙にあるU/LIRG 57天体からなるサンプルの広域X線スペクトルを解析することで、系統的にそれらの中心核構造を調査した。その結果、銀河合体の段階が進むにつれ、(1) 中心核の吸収量が増加し「コンプトン厚AGN」の割合が増えること、(2) AGNからのX線光度がボロメトリック光度に対して弱くなること、(3) 強力なアウトフローが見られること、を発見した。また、星形成率とブラックホール成長率を比較することで、確かに銀河合体に伴って銀河とブラックホールが共進化している証拠を得た(Yamada, Ueda et al.)。 AGNトーラスの物理的起源を検証するため、有力な理論モデルの一つである「放射駆動型噴水モデル」に着目し、それが予言するX線スペクトルを計算した。これを 狭輝線セイファート1型銀河 NGC 4051のデータと直接、比較したところ、観測されたWarm Absorberからの特徴の一部がよく再現できることがわかった(Ogawa, Ueda et al.)。
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