研究課題
高温高圧下におけるカンラン石の高圧相転移メカニズムの解明を目的として、強い衝撃変成を経験した3つの普通コンドライト隕石のTEM観察を行った。観察した隕石では、母相のオリビンの一部が、固相のまま粒径1ミクロン前後のスピネル相(リングウッダイト)や準スピネル相(ワズレアイト)粒子の集合体に高圧相転移している。これらのオリビン高圧相の内部組織を高分解能観察したところ、過去にイプシロン相として理論予測されながら実試料では観察例のなかった、新準スピネル相(新鉱物ポワリエライト)が発見された。Tenham隕石のリングウッダイト粒内には、{110}面上に幅数nmのポワリエライトのラメラが形成され、両鉱物は、<110>Rwd//aPoi//bPoi, cRwd//cPoiという結晶方位関係を示した。一方、Miami隕石のワズレアイト粒子は(010)面上にポワリエライトラメラを示し、結晶方位関係はaWds//aPoi, bWds //bPoi, cWds //cPoiであった。これらは、オリビン多形構造のトロポジー解析に基づき指摘されたものと一致し、リングウッダイト、ワズレアイト格子の剪断変形による無拡散メカニズムにより、ポワリエライトが形成されたことを示唆する。Suizhou隕石については、母相のリングウッダイト単結晶に含まれるポワリエライトに対してX線結晶構造を行った。イプシロン相モデル(直方晶系)を元に構造精密化し得られたポワリエライトの格子定数は a = 0.5802(11) nm, b = 0.2905(9) nm, c = 0.8411(16) nmであり、準スピネル構造群では最小の単位格子を持つことが確認された。また、MサイトにおけるMg,Feの席占有率から求めた化学式は(Mg1.96Fe0.04)2SiO4、密度は3.33 g/cm3であった。
2: おおむね順調に進展している
隕石の電子顕微鏡観察では十分な成果があがり、論文発表も行うことができた。2022年度以降も同様に観察を推進する。一方、高温高圧実験については、新型コロナ禍の影響で、装置のある岡山大学惑星物質研究所への出張が困難となった。そのため、2020年度の作業の大半を2021年度に繰り越した。実験手法は2021年度中に確立させることができ、一部の実験を予定通り完了した。計算機実験については、2021年度に研究基盤が整い、予備実験開始することがきた。全体として課題のスタートアップは良好であり、2022年度以降も大きな支障なく研究が遂行できる。
隕石の電子顕微鏡観察は極めて順調であり、2022年度以降も同様の体制で分析を推進する。高温高圧実験については、新型コロナ禍の影響がありえるが、共同研究者との連携体制を見直し、高温高圧実験の作業を一部リモート化することで、2022年度以降についても大幅な遅延なく実施可能である。計算機実験については、2021年度内に基盤が整ったため、今後本格的な研究を継続できる。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
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