研究課題
今年度は高温高圧下におけるカンラン石の高圧相転移メカニズムの解明を目的として、川井型超高圧発生装置によるオリビンの高圧相転移実験を行った。出発物質には、サンカルロス産オリビン粉末[Mg/(Mg+Fe)=0.9]を用いた。試料に一定の差応力が働くよう、オリビンは100ミクロン以下の不均質な粒径分布に荒砕きして試料カプセルに封入し、圧力14GPa及び16 GPa、温度900℃で2時間保持後、急冷し減圧した。回収試料のTEM観察において、出発物質のオリビンは一部が粒径2ミクロン以下のリングウッダイト及びワズレアイト集合体に高圧相転移していた。また、リングウッダイト中には、高い差応力(未反応のオリビンの転位密度から見積もった差応力:0.4-0.6GPa)により、{110}面上に高密度の積層欠陥とポワリエライトが形成されていた。リングウッダイトとポワリエライトの結晶方位関係は、昨年度報告した隕石中の産状と整合的である。ポワリエライトの形成条件を探るため、密度汎関数法による計算も行った。その結果、0 K、0-20 GPaの圧力範囲において、ポワリエライトはMg2SiO4の多形中で最も高いエンタルピーを持つことが明らかになった。隕石の衝撃変成において、原子の長距離拡散が生じにくい低温、また格子の剪断変形が生じやすい高差応力条件が揃った場合、準安定的にポワリエライトが形成される可能性が高いと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、新型コロナ禍のため2020年度中に完了できなかった圧力条件での高温高圧実験を行った。一部の実験作業をリモート化などで効率化し、装置のある岡山大学惑星物質研への出張日数を短縮することができた。計算機実験についても、順調に成果がではじめており、来年度も引き続き実験を継続する。
高温高圧実験については、今年度と同様に一部の作業をリモート化などで効率化し、更に圧力条件を変えた実験を行う。回収試料の電子顕微鏡観察は、研究代表者が維持管理している設備を用いているため、今後も遅延なく分析が行える。計算機実験については、担当の研究分担者が海外に渡航中であるが、インターネットの利用により、実験や議論の遂行には全く支障がない。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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