硫化カルボニル(COS)は成層圏硫酸エアロゾル形成による地球の冷却効果の一因となる他、一次生産量の間接的な指標となる。しかし、COSの生成源のうち60%以上の起源が不明と指摘され、過去から将来にわたる成層圏硫酸エアロゾル量の推定や、COSを用いた一次生産量の評価を困難にしている。そこで本研究では、数値モデリング手法に基づく大気硫黄循環の解析に、COSミッシングソースを特定し、全球COS収支を解明する。 本研究の初年度では連続的に大気COS濃度測定が可能な装置を導入し、大気COS同位体比測定に関して、これまでの観測結果をまとめた。 2022年度では都市部と森林地帯における連続的に大気COS濃度測定を開始し、測定器の安定性及びCO2濃度の時間変動と比較することでCOS発生起源の推定は可能となりました。 装置の校正は2020年に実施してもらったが、2022年時には装置消耗による測定データの異常が感知された。これまでのデータのどの部分が使用でき、装置にどのような故障が起きたのか詳細に調査するために、実験装置を修理に出した。修理は8月に発注し、11月納品を予定していたが、半導体の供給不足、コロナウイルス感染拡大の影響などで納期が遅れた。納品後、もう一度その装置で同様の実験を実施し、取得済みデータについて再解析を行なった。 COSの起源となる二硫化炭素(CS2)の酸化過程について1Dモデルで研究を行った。その結果、対流圏下部においてUV-A紫外線はCS2の光励起反応を起こすことを明らかにし、これまでモデル研究では考慮されてこなかったCS2からOCSへの酸化過程を論文の形でJGR(Atmosphere)に投稿し現在審査中です。2021年度に計算機に導入した3次元大気化学輸送モデル(GEOS-Chem)に新たに発見したCS2酸化過程を加え、COSの未特定起源を調べています。
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