昨年度までに、本基盤研究で当初計画した開発事項は全て完了した。開発したシステムを炭素質隕石中の難揮発性包有物に適用し国際学会にて発表した。 本年度は、さらに水素の定量イメージング分析技術を進展させるため、新たな水素の分析手法を考案して火星隕石に適用した。二次イオン質量分析法で固体中の水素分析を行う場合、真空装置内の残留水素の試料表面への吸着がバックグランドとなる。バックグランドを下げて低濃度の水素を定量分析するには、試料に照射するイオンプローブの密度が高ければ高いどほバックグランドが下がり低濃度まで検出可能となる。そこで、イオンプローブを数ミクロンのガウシアン強度の形状にして固体表面にスポットで照射し、スパッタされて出てくる水素イオンを同位体顕微鏡の投影型イオン光学系とイオン撮像素子でイメージングすることで、最もプローブ密度の高い領域の水素信号を画像から関心領域を選んで取得するというものである。 本手法を、共同研究者のGreenwood博士らと標準ガラス試料および火星隕石に適用し、数ミクロン領域に含まれるガラス中の1.66ppmの水素の定量に成功した。その結果を2024年3月11-15日に米国ウッドランドで行われた第55回国際月惑星会議にて報告した(Ordonez et al. (2024) LPSC LV #1307)。また、本会議で火星隕石に対して行った水素イメージング分析の結果も同時に報告した(Jiang et al. (2024) LPSC LV #1310)。
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