研究課題
二重放物面反射を利用して強力超音波を導波路から出力する独自構造をDPLUSと命名し、その基本特性についての研究を遂行している。本年度は、まず、超音波出力を行う圧電材料について検討を行った。強力超音波の出力時には、圧電材料のQ値と高応力下での非線形特性が特に重要となり、適切な圧電材料を用いれば導波路先端の振動速度が10m/s近くなっても共振周波数変化は非常に小さくできることを明らかにした。また、導波路として直径1mmのジュラルミンに代わり、Ti-Ni系の1mの超弾性ワイヤを導入した。このような柔軟で長い導波路においても、DPLUSで集束した強力超音波は十分に伝搬し、先端における強力超音波によって動物性油脂を溶解できることを確認した。また、このDPLUSの基本原理を発展、展開して、円筒型導波路に強力超音波を導入するための二重放物面反射機構を提案し、チューブ型DPLUSと命名した。この振動子に各種センサを挿入することで、DPLUS先端の様子を観察したり、温度や音圧測定をすることが可能となる。さらに、細い流路に対して一回の放物面反射を介して強力超音波を照射する機構についても提案し、その有効性の検討を行った。この強力超音波集束構造の流路に血液を流し、赤血球の表面を破壊する溶血プロセスを実施した。1MHz程度の周波数により、効率的に溶血プロセスが完了することを確認し、従来のランジュバン振動子による溶血システムを大幅に小型化できる可能性を示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
出力超音波のハイパワー化に成功するとともに、新原理の超音波集束機構(チューブ型DPLUS、流路一体型SPLUS)を提案し、その有効性を確認することができている。
本研究で提案する二重放物面の強力超音波集束機構(DPLUS)では、まだ未解明であることが多く残されている。たとえば、最適設計指針や高周波化について、検討を重ねていきたいと考えている。
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