研究課題
二重放物面反射を利用して強力超音波を細棒導波路から出力する独自構造をDPLUSと命名し、その基本特性についての研究を遂行している。本年度は、圧電材料としてQ値が高いものを用いることの重要性についての昨年度の知見を定量的に展開した。具体的には直径1mmで40mm長の導波路先端から1.7MHzでの水中音圧として1.3MPaもの高出力が得られることを示した。また。DPLUSの特長のひとつである多数モード出力に関して、31kHzと1.3MHzにおける生体材料(脂肪)への超音波照射の比較を行った。その結果、1.3MHzの強力超音波照射における指向性の優位性によって、1MPaの高出力が2.5mm以上もの内部に照射されることを明らかにした。また、昨年度に着想して実現したチューブ型DPLUSにおいて、円筒導波路内に温度センサを導入し、超音波照射を行いながら先端での温度測定をリアルタイムに行う実験を可能とした。この結果、超音波照射対象を生体脂肪部とした場合を一例として、照射時間と温度上昇の関係を実測し、この結果からこの生体材料の超音波伝搬損失に関する物性値を得ることができるようになった。このチューブ型DPLUSに関しては、Pochhammer-Chree理論からの解析結果を有限要素法解析と比較しながら円筒型導波路内部の伝搬過程を明らかにした。この結果、導波路伝搬における速度分散性に起因するモード分離を確認し、放物面二重反射での超音波集束機構の設計に重要となる知見を得ることができた。さらに、二重放物面反射での縦波からの横波へのモード変換に伴う伝搬過程について詳細な検討を行い、超音波集束機構のメカニズムを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
DPLUSにおける導波路先端部での超音波出力特性を実験およびシミュレーションで明らかにすることに成功している。またチューブ型DPLUSにおいては、導波路内部での超音波伝搬特性を明らかにするとともに、二重放物面内部での伝搬特性を検討することで、DPLUSそのものの基本特性を明らかにするという本研究の目的を達成しつつある。
高出力の超音波を広い帯域で多数モードとして出力できるというDPLUSの特長を生かしたアプリケーションを見出し、実用化を目指した研究を推進していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.hsd.k.u-tokyo.ac.jp/contents/research.html