研究課題/領域番号 |
20H02313
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
久保田 徹 広島大学, 先進理工系科学研究科(国), 准教授 (80549741)
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研究分担者 |
佐古井 智紀 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (70371044)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 熱的快適性 / 着衣 / 温熱生理 / 適応モデル / 熱帯地域 / インドネシア |
研究実績の概要 |
当初予定していたインドネシア現地での実地調査ができなかったため,2020年度中は,①現地調査に用いるための計測器の開発と,②着衣に関するパイロット調査を実施した。 計測器の開発は,主に研究分担者・佐古井准教授が担当した。インドネシアなどの高温多湿気候下においては居住者の温冷感に及ぼす気流の影響は大きく,微風速の室内気流をできるだけ安価で高精度に計測することが課題であった。そこで,本研究では,計測器会社とも連携して,比較的安価な熱式風速計を開発し,その精度検証を行った。各風向ごとに校正式を導出し,高価な熱式風速計と同程度の精度を確保した。 上記の風速計に加えて,気温・湿度,グローブ温度の小型センサーをマイコンボードに接続した包括的な温熱計測器を開発した。これによれば,従来の1/10以下のコストで熱的快適性に関する包括的な実測ができ,従来はコスト面で困難であった大規模なフィールド調査の実施が可能となった。 着衣量は代謝量とともに居住者の熱的快適性に大きく影響を及ぼす人体側の主要因であるが,インドネシアの一般居住者が自宅や職場でどのような着衣を用いているかは明らかにされていない。そこで,本研究では,インドネシア全土を対象としたオンライン調査を実施し,着衣の実態を把握した。 2020年度は,まず,インドネシアの着衣の厚さに関する被験者実験を行った。着衣の厚さは,着衣による被覆面積と同様に熱的抵抗に寄与する重要なパラメタであるが,その感覚は,熱帯の居住者特有であると考えられた。そこで,インドネシアのカウンターパートである人間居住・住宅研究所の職員60名を対象に,種目ごとで厚さの異なる着衣のサンプルを与え,厚さの感覚を5段階評価で聞くとともに,厚さ計を用いた計測を行い,意識調査結果と照合した。これにより,概して,「非常に厚い」という感覚を持つケースは非常に少ないなどの結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書記載のとおり,本研究はインドネシア現地における実地調査を軸とした研究計画であった。したがって,新型コロナウイルス感染症による影響で渡航が制限されたことによる影響は非常に大きい。上記のとおり,渡航できないために,研究期間途中で柔軟に研究計画を変更し一定の成果を出しているが,従来計画に対しては遅れが生じていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を一年間スライドさせ,2021年度に実地調査を行う予定であったが,同年度中もインドネシアへの渡航制限は大きく緩和されることがなく,実施ができなかった。そこで,2021年度中は,代替計画として開始した着衣に関するオンライン調査を実施するとともに,計測器の開発を含めた実地調査の準備を行う。 なお,実地調査は,インドネシア現地の研究協力者を主体として,2022年6月より開始する予定である。日本側研究者は,渡航制限が緩和され次第,現地に向かい,インドネシア研究者と共同で調査を実施する。
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