研究課題/領域番号 |
20H02320
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井内 加奈子 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (60709187)
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研究分担者 |
高木 泰士 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40619847)
地引 泰人 東北大学, 災害科学国際研究所, 研究員 (10598866)
近藤 民代 神戸大学, 都市安全研究センター, 教授 (50416400)
楠 綾子 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (60531960)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 移転・復興計画論 / ハザードマップ / 復興土地利用 / スラウェシ島中部地震 / 台風ハイアン / 被災沿岸地 / 復興ガバナンス |
研究実績の概要 |
4年を計画している研究の2年目となる2021年度は、台風ハイアン被災地(タクロバン市周辺)で前年度までに収集した移転関係のデータを精査・分析し移転復興計画の枠組みについて、再検討・理論化した。また、中部スラウェシ(パル市を含む)の「復興計画の策定過程の解明」を中心とした研究を進めた。中部スラウェシ地域は震災から3年目を迎えたタイミング(コロナ禍により一部4年目に入る)で、研究計画で構築した移転フェーズの枠組みでは、「事業計画決定から実施までの、被災後約2年から4年」の段階にあたる。このため、当初の計画どおり国際援助や国家政府を含む計画策定者の復興理念・方針と復興・移転の現状把握を行った。内容は、歴史・政治、復興政策、利害関係者の把握などで、デスク調査の他、復興計画の策定過程を追うために、日本国内関係者や対象地の協力者を通じて関連の現地情報を収集した。
結果として、まず、フィリピンの事例では、復興における移転に関し、住民の生活上の懸念が時間とともに変化し、ハザードリスクの軽減から生活の再確立、そして最終的には適応へと変化することを明らかにした。これはScudderが「定住プロセスの動的モデル」と読んだ古典的な概念モデルに沿って説明でき、このモデルの有用性も再確認できた。次に、中部スラウェシ地域においては、復興の基本構造として、復旧・復興マスタープラン、法的・制度の設立、土地利用・空間計画などの情報を収集し、分析を行った。また、復興を構成する項目(例えば、ハザードマップの作成と土地利用/ゾーニング、住民移転と住宅建設、インフラ建設など)に関する情報収集を行い、整理・分析の上、タイムラインを把握した。政府の動向としては、2024年末までの復興終了を計画していることも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに収集したタクロバン市における移転・復興関係のデータの精査・分析より、住民移転計画論の基礎となる計画的側面からの移転過程の枠組みが、一つの事例結果として明らかになった。特に復興時の住民移転に対する時間的な影響について、明らかにすることができた。また、中部スラウェシ州においても、事業実施過程のモニタリングのための項目(①防潮堤、②移転先住宅地、③沿岸部の元居住地)の現況について把握することができ、計画と現況のひずみについてこれから分析を進めることができる。このようにタクロバン市や中部スラウェシ地域を対象とした研究成果を、国際学会での発表や英文での論文発表を行うことができたなど、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3年目となる2022年度は、引き続き中部スラウェシ地域を研究の焦点にあてる。同地域は2018年の震災から4年目となっており、復興における住民移転プロセスの検討枠組み*の「復興計画の策定過程の解明」のフェーズに該当する。コロナウィルス感染症の影響を考慮しながら、オンラインインタビューなども検討しつつ、移転・防潮堤事業等の実施履歴や実施の過程を資料や現地踏査から把握し、モニタリングを行う。被災者を対象にした移転地の住宅については、1箇所を除き完成型に近づいていること、パル湾南部の防潮堤・橋梁についても建設が一部開始していることから、復興計画策定時に作成された地域ハザードマップとの整合性についての検討や、これら構造物が与える被災者の生活への影響についての現況把握にも努める。
*①被災後に復興方針や計画が策定されるまでの被災時から約2年前後の期間を対象に「A)復興計画策定過程の解明」、②事業計画決定から実施までの、被災後約2年から4年の期間を対象に「B)事業実施過程の解明」、③生活空間再興後と定義する、被災後4年以降の期間を対象に「C)事業実施後の生活空間評価」を検討する。
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