研究課題/領域番号 |
20H02613
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山末 耕平 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (70467455)
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研究分担者 |
加藤 俊顕 東北大学, 工学研究科, 准教授 (20502082)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 走査型非線形誘電率顕微鏡 / 走査型非線形誘電率ポテンショメトリ / 界面物性 / キャリア物性 / 原子層材料 |
研究実績の概要 |
本課題では,原子層材料・デバイスのキャリア物性,界面物性,結晶欠陥などをナノ・原子スケールで評価できる顕微鏡技術の研究を進めている.研究実績は次の通りである.(1) 間欠接触・大気中動作走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)による原子層半導体材料観察に関する論文を発表した.従来のコンタクトモード原子間力顕微鏡(AFM)を併用したSNDMに比較して,探針走査にともなう水平方向の力を大幅に低減可能な間欠接触SNDMを用いて,代表的な原子層半導体であるMoS2に生じる多数キャリア分布の異常の観察に成功したことを報告した.ニオブドープMoS2が数原子層まで薄化するとp型半導体からn型半導体に遷移する異常なキャリア物性を可視化し,測定結果を解析することで,薄化にともなうn型ドーピング密度の定量的見積を得た.また,UVオゾン酸化処理にともなう多数キャリア分布の変化を可視化できた.(2) 絶縁膜コート探針による原子層半導体材料の電界誘起キャリア分布観察を実現し,国際会議にて報告した.従来のSNDMでは,測定時に導電性探針を試料表面に接触させる.しかしながら,シリコンなどと異なり,原子層材料の表面は不活性のため自然酸化膜が形成されず,探針が材料表面に直接接触する.このため,探針からの試料への電荷注入を生じる可能性があり,電界効果による誘起キャリア分布観察など高電圧印加時は,試料固有の誘起キャリア分布のみを可視化することは困難であった.本課題では,絶縁性薄膜でコートした探針の開発を進め,本問題を克服した.これにより,原子層材料を用いたデバイスの特性を予測するうえで重要な電界誘起キャリア分布観察を可能とした.SiO2上のWSe2や架橋構造上のWSe2を試料とし,電界効果による誘起キャリア分布の観察が再現性良く行えることや界面特性による違いが検出可能なことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発を進めてきた間欠接触・大気中動作SNDMを用いて,MoS2のキャリア分布の異常の観察が実現された.また,同様に開発を進めてきた絶縁膜コート探針を用いて,WSe2の電界誘起キャリア分布観察が実現できた.以上の実績と実施計画の比較に基づいて,実施計画をおおむね満足する進捗が得られていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
開発した間欠接触・大気中動作SNDMや絶縁膜コート探針を,最近,発展著しい時間分解方式のSNDMと組み合わせることで,局所容量-電圧(CV)特性測定・局所Deep level transient spectroscopy (DLTS)による原子層半導体材料の界面物性評価をナノスケールで実現する.また,測定結果の解析のため,半導体デバイスシミュレータを援用したSNDM観察シミュレータの作成を引き続き進める.
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