研究課題/領域番号 |
20H02793
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
桑折 道済 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80512376)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メラニン前駆体高分子 / 日焼け / 高分子微粒子 / 共役長制御 / メラニン化 / 構造色 / ポリチロシン |
研究実績の概要 |
微細な周期構造に由来する構造色は、退色がなく独特の光沢を有することから、次世代型の色材として期待されている。我々はこれまで、ポリドーパミンを用いる人工メラニン粒子による構造色材料の開発を行ってきた。本研究では、これらの研究知見を発展させ、外部刺激によって視認性の高い構造色を発現する技術を確立し、構造色による高解像度な印刷技術を開発する。これらの研究を通して、構造色を基盤とする色材開発の学理と技術革新に貢献することを目的とする。 これまで、コア粒子表面に、人工メラニン層としてポリドーパミンを用いたコア-シェル型の人工メラニン粒子を独自材料として、研究開発を進めてきた。本年度はポリドーパミンに変えて、メラニン前駆体高分子となるポリチロシンを被覆した新たなコア-シェル型粒子を作製した。チロシンはドーパミンに比べて重合活性が低いものの、酸化剤存在下での重合により、酸化セリアコア粒子表面に約10nmのポリチロシンシェル層を構築した。得られたメラニン前駆体粒子で作成したペレット材料は、光吸収能を持たないことから、乳白色のペレット材料となった。メラニン前駆体粒子を溶媒に分散し、254nmのUV光を照射後にペレット材料を作成したところ、光照射時間が増加するに従って発現する構造色の視認性が向上した。詳細な解析より、光照射によって高分子の共役系の伸長によるメラニン化と、粒子表面の平滑化が進行し、結果として鮮やかな構造色が発現することがわかった。 さらに、日焼けに発想を得て、メラニン前駆体粒子に太陽光を照射した。その結果、メラニン化とともに、太陽光に含まれるUVAによる影響で高分子の屈折率が上昇し、より短時間で構造色の彩度が向上することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ポリチロシンを用いたメラニン前駆体粒子を作製し、UV光ならびに太陽光照射によって、共役系制御に基づく構造色の視認性の制御に成功した。外部刺激によって構造色の可視性を制御できる新たな知見を得ることができ、おおむね当初の計画通りに研究が推移していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は高分子主鎖にチロシン骨格を有するメラニン前駆体高分子を検討した。次年度は、より汎用性の高く、多彩な機能付与を目的として、側鎖にチロシン骨格を有するメラニン前駆体を新たに設計/合成する。側鎖型のメラニン前駆体高分子で被覆した粒子に、光照射もしくは酵素反応による共役系の制御を行うことで、構造色の視認性制御を検討する。
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