研究課題/領域番号 |
20H02801
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山下 建 (アルブレヒト建) 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (50599561)
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研究分担者 |
藤田 克彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (20281644)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デンドリマー / カルバゾール / 熱活性化遅延蛍光 / 有機EL |
研究実績の概要 |
代表者はこれまでにカルバゾールをHead-to-Tail型で樹状に連結したデンドリマーとアクセプターを連結することで塗布成膜可能な熱活性化遅延蛍光(TADF)材料を開発し、有機ELの発光層として展開してきた。アクセプターをベンゾフェノンとした場合にカルバゾールデンドロン末端に嵩高い置換基であるtert-ブチル(tBu)基を修飾した場合に発光量子収率(PLQY)が最も高くなるという結果を得ている。本年度はより嵩高い置換基としてアダマンタン(Ad)、トリチル(Tr)、テトラフェニルフェニル(TPPh)基の3つを導入した第2世代デンドロンを合成してベンゾフェノンと連結した。Tr基を末端に持つデンドリマーは溶解性が著しく低く、塗布成膜には不適であることが分かった。TPPh基を末端に持つデンドリマーはニート膜のPLQYが10%程度と低く、発光寿命測定からTADFをほとんど示さないことが明らかとなった。Ad基を導入したデンドリマーは40%程度と比較的PLQYが高く、TADFも示した。従来のtBu基よりも高いPLQYのデンドリマーは得られなかった。TADFの有無については現在デンドロンの三重項準位を用いた考察を行っており、高いPLQYとTADFの発現を両立するためのデンドリマー構造についての知見を増やすことが出来た。 本課題で新たに研究を開始している発光ラジカル骨格であるTTM(tris(2,4,6-trichlorophenyl)methyl)へのカルバゾールデンドロンの導入についてはヨウ素や臭素を導入した前駆体の合成を試みた。既報に従ってヨウ素を末端に持つ前駆体の合成に成功したがその後のN-Arylation反応は進行しなかった。新規なルートを現在検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的の1つとしていた嵩高い置換基を有するカルバゾールデンドリマーの合成については達成したが、発光量子収率が低かったことから有機EL素子の作成には至らなかった。コロナ禍による研究着手の遅れも理由である。 一方で、発光ラジカルとデンドリマーの連結については当初予定の合成ルートは困難なことが明らかとなったが、有望な新規合成ルートの目処は経ってきており、当初計画通りに来年度には合成と評価が可能だと考えている。 以上の点から主にコロナ禍を原因としてやや遅れているが来年度以降は計画通りに進展することを見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
嵩高い置換基を持つデンドロンについてはエネルギー準位測定も含めて知見を得たので、ベンゾフェノンとは異なるアクセプターへの連結と物性評価を行い、より高い発光量子収率を持つデンドリマーを合成する。 発光ラジカルとデンドリマーの連結については初期検討を行っている芳香族求核置換反応によるヨウ素置換カルバゾールの導入を行う。このヨウ素を足がかりにデンドロンを連結することで、翌年度での合成達成と物性評価を行う。
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