共生糸状菌Colletotrichum tofieldiae (Ct) によって根圏に誘引される8種の細菌の中には貧栄養環境で植物生長を促す有用細菌に加え、単独では病原性を示すPseudomonas属の細菌が同定されている。本年度は、およびPseudomonas属細菌とCt菌との相互作用について研究を進めた。本細菌による植物生長阻害は、植物と物理的に直接触れていない条件下でも認められたことから、揮発性物質を介していることが示唆された。また、ゲノム解析を行ったところ、既存の近縁種で植物の生長を阻害することが報告されていた揮発性物質の合成因子群が本菌にも保存されていることを見いだした。現在は、本菌の揮発性物質による生長阻害がこれら既存の揮発性物質合成遺伝子が関与しているかどうかを検証するため、該当遺伝子の破壊株を作出中である。一方で、驚くべきことに、栄養十分条件では、本細菌由来の揮発性物質は植物生長を著しく阻害したのに対して、貧栄養環境下で細菌が存在する際には、本細菌由来の揮発性物質が植物の生長をリン欠乏下で著しく促すことを発見した。本揮発性物質による植物生長促進には植物のリン欠乏枯渇応答を司る転写因子PHR1とPHL1が少なくとも部分的に必要であることが判明した。現在は、ガスクロマトグラフィーを用いた揮発性物質の同定を進めると共に、トランスクリプトーム解析を用いて該当の合成遺伝子群の絞り込みを行おうと考えている。
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