研究実績の概要 |
本課題の主題であるHox遺伝子群の時空間的発現制御に関して、多様な脊椎動物の全ゲノム情報を参照することにより、Hox遺伝子群を含むゲノム領域の配列特性について、遺伝子構造から視野を広げ、ゲノム環境という視点でその進化過程を記述することが可能になった(Kuraku, Dev. Biol., 2021. 477: 262-272)。かつてはクラスターごと欠失したとされたサメ・エイのHoxCクラスターではあるが、それは全ゲノム情報が得られる前に見切り発車で発信された、精査の不十分な情報であった。イヌザメでは、HoxC6、C8、C11、C12、C13が同じ転写の向きで、ゲノム上に並ぶ。まさに「Hoxクラスター」と呼びたくはなるが、そのゲノム領域の反復配列の頻度は非常に高いうえ、この領域の長さは200Kbを超え、通常100Kbからなる脊椎動物の標準なHoxクラスターよりも間延びしている。軟骨魚類を比較に加え、Hoxクラスターの時空間的発現制御について解析を続けていく。Hox遺伝子群に注目した解析と並行して、主に軟骨魚類の全ゲノム情報の集積を進めている。代表者が主導する軟骨魚類オミクスコンソーシアムSqualomix(スクアロミクス; https://doi.org/10.22541/au.162498956.63679523/v1)は、世界規模のイニシアチブEarth BioGenome Project (EBP)に加盟し、技術的に連携しながら、注目する重要生物のゲノム情報の読取りとその情報を利用した生命科学研究を行っている。Squalomixコンソーシアムの活動は、EBPの進捗報告(Lewin et al., PNAS, 2022. 119: e2115635118)でも言及されており、本課題に付随した「先進ゲノム支援」採択課題からの成果もまた、EBPの進捗の一部にカウントされる。
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