個々の生態系は独立に成立しているのではなく、異地性有機物のフロー、すなわち栄養補償を介して関連している。これまで、森林から河川湖沼に流入する落葉などの異地性有機物は、炭素・エネルギー源となるため、腐食連鎖を通じて水圏高次生産を涵養していると考えられてきた。しかし、本研究により落葉は植物プランクトンの栄養源としても重要で、生食連鎖も促進すること、しかしその影響の大きさは落葉樹種によって異なっていること、などが実験的に示された。これら結果は、集水域の植生変化は河川湖沼生物群集にも大きく影響する可能性を示しており、水圏生態系の保全には集水域植生を健全に維持していくことの重要性を示している。
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