研究課題
慢性痛とうつ病・不安障害の併発率が高いことから両者に共通の神経基盤の存在が推測される。申請者らはこれまで、痛みによる負情動生成に分界条床核における神経情報伝達が関与していることを明らかにしてきた。そこで本研究では、分界条床核での神経情報伝達可塑的変化に焦点を当てた研究により、慢性痛による抑うつ・不安惹起の脳内メカニズムを明らかにすることを目的とする。これまでに、慢性痛動物において分界条床核から外側視床下部に投射する神経細胞への抑制性入力が増強していること、その上流の神経機構として慢性痛時に、分界条床核内CART神経の活動が亢進していることを明らかにした。2022年度は、CART神経に痛み情報を伝達する神経経路について、光遺伝学および電気生理学的手法を用いた検討を行い、痛覚情報伝達の中継核であると考えられている外側腕傍核からCART神経に興奮性の入力があることを明らかにした。また、CART神経同様、分界条床核内CRF神経についても、慢性痛時に興奮性が増大していることを明らかにした。申請者らは、慢性痛モデルラットを用いた研究により、慢性痛時に分界条床核から腹側被蓋野に投射する神経細胞への抑制性入力が増強し、慢性痛時に見られる抑うつやアンヘドニア(快の喪失)に関与している可能性を報告している。そこで、分界条床核から外側視床下部に投射する神経細胞と腹側被蓋野に投射する神経細胞の関連性を組織学的手法により解析したところ、分界条床核から外側視床下部に投射する神経細胞の約半分が腹側被蓋野にも投射し、分界条床核から腹側被蓋野に投射する神経細胞の約半分が外側視床下部にも投射していることを明らかにした。この結果は、分界条床核からのアウトプットが慢性痛時に抑制されることにより、抑うつや不安などの負情動生成に関与する神経路を統合的に調節していることを示唆している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Science Advances
巻: 8 ページ: eabj5586
10.1126/sciadv.abj5586
Neuropsychopharmacology Report
巻: 42 ページ: 233-237
10.1002/npr2.12252
https://www.pharm.hokudai.ac.jp/yakuri/index.html