研究課題/領域番号 |
20H03530
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小薗 真吾 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40706850)
|
研究分担者 |
進藤 幸治 九州大学, 大学病院, 助教 (00788432)
木庭 遼 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10866776)
水内 祐介 九州大学, 大学病院, 助教 (20849088)
久保 真 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60403961)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 膵癌 / オルガノイド / 癌間質相互作用 / PDXマウス / desmoplasia / 化合物ライブラリー / 膵星細胞 / 微小環境因子 |
研究実績の概要 |
膵癌は非常に予後不良な疾患であり、新規抗癌剤の開発が急務である。膵癌組織はdesmoplasiaといわれる著明な間質増生による癌間質相互作用が膵癌の抗癌剤抵抗性に大きな影響を及ぼしていると考えられている。本研究では、ヒトの膵癌組織から樹立したオルガノイドおよびPDXマウスモデルを利用して、膵癌に対する新規の抗癌剤をスクリーニングするシステムを開発、さらには患者それぞれの膵癌組織における抗癌剤感受性を検索してテーラーメイド治療を提供するシステムを構築することを目的とする。 本年度はヒト由来膵癌切除組織から膵癌オルガノイドを樹立し、ヒトPSC細胞を共培養する新規オルガノイドモデルを確立し、癌間質相互作用と薬剤感受性について評価した。膵癌間質は膵癌のphenotypeに影響していると考えられ、分化度に応じた膵癌phenotypeと薬物治療反応性について検討した。高分化ほど癌細胞周囲のCAFを多く認め、微小環境因子への依存性が高く、mevalonate経路関連遺伝子の発現が増加しておりsimvastatin投与で有意に細胞増殖が抑制された。一方、低分化型は細胞周期関連遺伝子の発現が増加しており、Gemcitabine投与で有意に細胞増殖が抑制された。分化度に応じて薬物治療反応性は異なっており、分化型膵癌は微小環境因子によってそのphenotypeが保持されている可能性が示唆された。これは分化度に応じた個別化治療や新たな標的治療を開発する上で重要な知見となり得ると考えられた。今後、ヒト膵癌由来オルガノイドライブラリーを作成する上で、膵癌のphenotype分類が重要な因子となり得ることから、さらなる検討を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画に沿って、ヒト膵癌細胞由来オルガノイドとヒトPSC細胞の共培養による新規オルガノイドモデルを多数樹立したが、オルガノイドライブラリーの作成には至っていない。本年度の研究成果より、膵癌分化度に応じて薬物治療反応性は異なっていると示唆され、分化度に応じた膵癌オルガノイドの微小環境因子や薬剤感受性についてさらなる検討を行う必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒト膵癌由来オルガノイド作成のため検体数を十分に確保し、膵癌分化度に応じたphenotype分類を行う。微小環境因子によって誘導される分子生物学的特徴のさらなる検討を行う。患者の臨床情報や治療情報、次世代シークエンスを利用した遺伝子変異情報を含めたヒト膵癌由来オルガノイドライブラリーを作成する。ハイスループットスクリーニングに利用するオルガノイドの選択と大量培養を行い、国内外で利用可能な化合物ライブラリーを利用してハイスループットスクリーニングを行う。検索された化合物は、異なるヒト膵癌由来オルガノイドと膵癌PDXマウスモデルを用いて、新規抗癌剤候補薬の効果判定を行い、エビデンスレベルの高いデータを得ることを予定している。
|