研究課題
ソトス症候群(SS)における精神発達遅滞の分子病態を明らかにするため、原因遺伝子NSD1(エピゲノム修飾因子ヒストンH3K36メチル化酵素をコード)の脳組織(神経細胞)における標的遺伝子を同定し、遺伝子レベルから三次元組織構造までの実態を解析する。独自に作製した脳特異的Nsd1コンディショナルノックアウトマウス(Nsd1-cKOマウス)の脳組織の解析と行動解析を行った。脳組織をヘマトキシリン染色、免疫組織科学染色、MRI撮像により解析した。その結果、側脳室の拡大、海馬の縮小、海馬歯状回upperとlower bladeの短縮および菲薄化、脳梁形成不全、脳弓の縮小、歯状回における神経新生の減少を認めた。行動解析では、22項目にわたる解析を行った。その結果、社会的行動の減少、空間記憶の低下、短期記憶の低下が認められた。
2: おおむね順調に進展している
Nsd1-cKOマウスの行動解析は完了した。脳組織の解析も順調に進んでいる。現在、二光子顕微鏡による脳深部バイオイメージング解析のためのH-line(Thy1-YFP)マウスとNsd1-cKOマウスを交配を進めている。また、エピゲノム解析とトランスクリプトーム解析のために、海馬の神経細胞核を分離して取得する必要があるが、抗NeuN抗体を用いて成熟ニューロン核をセルソーターで分取する方法を確立した。
抗NeuN抗体を用いて分取した成熟ニューロン核のエピゲノム解析とトランスクリプトーム解析を行う。エピゲノム解析は、全ゲノムDNAメチル化解析(Illumina Mouse Methylation ArrayとEM-seq)とヒストン修飾(H3K36me2、H3K36me3、H3K27me3、H3K27ac、H3K4me1)を対象としたChIP-seqを行う。トランスクリプトーム解析はRNA-seqを行う。エピゲノム解析とトランスクリプトーム解析のデータを統合することで、NSD1の標的ゲノム領域 or 標的遺伝子を同定する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
The FASEB Journal
巻: 34 ページ: 960~973
10.1096/fj.201901757R
https://www.biomol.med.saga-u.ac.jp/mbg/