研究課題
NMD関連遺伝子SMG9の常染色体潜性突然変異は、心臓・脳奇形症候群(HBMS)と関連しており、これまでにホモ接合性のSMG9変異を持つ8家系12名の患者が報告されているが、SMG9変異がNMD経路にどのような影響を与えるのか、なぜHBMSを発症するのか不明であった。作製したSMG9遺伝子欠損ゼブラフィッシュは、長期生存可能であり、中枢神経系および心機能の異常をきたした。中枢神経系の発達異常を詳細に解析するため、神経幹細胞の特異的マーカー分子の免疫染色を行なったところ、幹細胞の減少を認めた。また、心臓特異的GFP発現ゼブラフィッシュとの交配により心収縮機能をモニタリングしたところ、有意に機能低下を認めた。さらに全身を病理学的解析にて調べたところ、中枢神経系と心臓のみならず、消化管、腎臓、肝臓、皮膚、生殖器など全身的な異常を認めた。その異常は早老症様であったため、老化マーカーであるβガラクトシダーゼ染色を行なったところ、SMG9遺伝子欠損ゼブラフィッシュの皮膚および脳に明らかな老化がみられた。そのため、SMG9遺伝子欠損により老化が促進されたと結論づけた。次に、老化が促進された分子メカニズムを解析するため、NMDの標的となるmRNA分子について定量的RNA-qPCRを行なった。多くのNMD標的mRNAの蓄積を認めたが、その中でポリアミン代謝に重要なSMOXに注目した。SMOXはスペルミンからスペルミジンを合成する酵素であるが、その際ROSとアクロレインを副産物として産生するが、これらは老化促進に作用する。そのため、SMG9遺伝子欠損ゼブラフィッシュではSMOXの発現上昇によりROSとアクロレインが大量に発生するため、老化が促進されたと考えた。実際、SMOX阻害剤とROS阻害剤で中枢神経系の発生と心機能の改善が認められた。SMG9 遺伝子欠損によりNMD機構が破綻し、mRNA代謝の異常が生じた。特にその中のSMOXが蓄積したことで、ROSとアクロレインが発生し老化を促進したと考えられた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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