研究課題
本研究では、女性ホルモン依存性の女性に特有ながんである乳がんと子宮内膜がんについて、 患者臨床検体から直接がん細胞を生体に近い3次元スフェロイド系で培養し、そのがん細胞を超免疫不全マウスに移植して腫瘍を作らせ、「患者由来女性がんモデル」の確立を進めている。この患者由来がんモデルを使って、病型や病期ごとにどのような栄養やエネルギーを使って、がんが増殖し進行するかの仕組みを実験的に解析することを進めている。遺伝子の発現パターン、およびクロマチンの転写活性化を指標として、がん病態の中で中心的な役割を担うことが予想される候補因子を探索し、それら因子の発現を低下ないし上昇させた際に、がん培養系や動物モデルでどのように腫瘍増殖性や薬剤反応性が変化するか、がん親玉細胞の性質とされるステムネスへの影響が変化するかなどの解析を進めている。さらに、女性がんに対する新しいがん診断・治療・予防法へ活用できる分子を探索し、病型や病期ごとに適したがん戦略の確立を目指している。
2: おおむね順調に進展している
倫理基準を満たした乳がん・子宮内膜がん臨床検体組織から細胞を分離し、 スフェロイド形態を呈する患者由来がん細胞を病型・病期別に複数系統確立した。 病型別や転移巣由来のがん細胞を超免疫不全マウスに移植して、病型・病期別の患者由来がん異種移植モデルを作製した。各種次世代シーケンス・ マイクロアレイ解析技術を用いて、これら女性がん患者由来モデルにおけるトランスクリプトーム解析とエピゲノム解析を進めている。これらの解析結果を統合して、代謝酵素と関連因子の探索を進めている。
乳がん・子宮内膜がん患者検体から、さらに患者由来がん培養系とそのマウス移植腫瘍の作製を進めていき、がん病型・病期別にその病態特異的な代謝機構を解明し、がん制御に関わる代謝因子・経路を標的とした新規がん診断・治療・予防への臨床応用を目指す。3次元培養系では、特にステムネスを有するがん親玉細胞分画が濃縮し、これらはがんの難治性や抗がん剤抵抗性に深く関わることから、本研究で得られる患者由来がんモデルはがん病態特異的な分子メカニズムの解析に活用し、既存がん細胞株の分子メカニズムと比較しながら、女性がん特異的代謝ネットワークの解明とその臨床応用を目指す。患者がん検体から直接マウスに移植し、腫瘍形成させるがんモデルについても作製して、培養系由来の腫瘍モデルと遺伝子プロファイルやエピゲノム状態、代謝機能について比較を進めていく。
「がん三次元培養研究会」は国立がん研究センター、金沢大学、埼玉医科大学を中心として、国内外のがん研究者が参集する基礎研究発表をメインとする研究会として活動しており、研究代表者は幹事およびホームページ管理担当を担っている。
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