研究課題/領域番号 |
20H04061
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
肥後 範行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究グループ長 (80357839)
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研究分担者 |
山本 竜也 つくば国際大学, 医療保健学部, 助教 (60724812)
村田 弓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (80512178)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 脳損傷 / 非ヒト霊長類 / 動物モデル / 神経可塑性 / 巧緻動作 / 組織化学 / マカクサル |
研究実績の概要 |
マカクサルを対象とし、健常で把握動作の学習のみを行った個体および大脳皮質第一次運動野損傷後、把握動作を用いたリハビリテーション訓練による機能回復が生じた時期に、機能代償に関わることが明らかになっている運動前野腹側部に解剖学トレーサーであるビオチンデキストランアミン(Biotynilated Dextran Amine, BDA)を注入した。BDAが充分に神経細胞に取り込まれ軸索を通じて運動前野腹側部と直接結合している領域に移動する、注入から1か月後に実験殺を行い、4%パラホルムアルデヒド溶液による還流固定後に脳および脊髄組織を採取した。これまでの研究で(Yamamoto et al., J Neuroscience, 2019)、第一次運動野損傷後に把握動作を用いたリハビリテーション訓練による機能回復が生じた個体では、機能代償にかかわる運動前野腹側部から小脳核に至る投射が新規に形成されること、新規の投射は小脳コンパートメントマーカーの一つであるaldolase Cの発現が少ない領域に限られることを明らかにした。今年度の新たな発見の一つとして、健常マカクサルの小脳における小脳コンパートメントマーカー(aldolase C、Phospholipase C beta 3 and Phospholipase C beta 4)の発現を調べた結果、小脳皮質、小脳核、前庭神経核におけるそれらのコンパートメントマーカーの発現は、げっ歯類小脳における発現よりも広範囲に拡大しているいることを明らかにした。この発現パターンの違いは、霊長類の小脳がげっ歯類の小脳と比べて運動機能だけでなく認知的な機能を持つことと関係している可能性がある。今後これらの小脳コンパートメントマーカーの発現パターンと、第一次運動野損傷後の運動機能回復過程における投射変化の関係を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の流行により出勤制限があり実験の遂行が滞ったこと、フリーザーが品薄であり入手できなかったため組織切片の作成を延期したことから若干の遅れがあった。ただし本年度明らかにした霊長類小脳関連領域における小脳コンパートメントマーカー(aldolase C、Phospholipase C beta 3 and Phospholipase C beta 4)の特異的分布に関する知見は、霊長類小脳の機能及び構造的特性を推察するうえで貴重である。さらに脳損傷後にどのような機能的モジュールにおいて神経投射の可塑的変化が生じているかを検証するためにも重要な知見を提供する。さらに脳損傷後に生じるミクログリアの活性化に関しても組織化学的解析を行い、その活性化のタイミングと機能的役割がげっ歯類と霊長類では異なることを明らかにした。本成果に関して論文にまとめ国際原著論文としてジャーナルに投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
霊長類小脳関連領域における小脳コンパートメントマーカー(aldolase C、Phospholipase C beta 3 and Phospholipase C beta 4)の特異的分布は重要な知見であり、論文としてまとめて公表する予定である。さらに脳損傷後に機能代償領域においてどのような解剖学的変化が生じているかに関して検証を続け、得られた成果を関連学会及び国際原著論文として公表する。
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