研究課題/領域番号 |
20H04106
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
須藤 信行 九州大学, 医学研究院, 教授 (60304812)
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研究分担者 |
吉原 一文 九州大学, 医学研究院, 講師 (20444854)
高倉 修 九州大学, 大学病院, 講師 (40532859)
三上 克央 東海大学, 医学部, 准教授 (90548504)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経性やせ症 / 脳腸相関 / プレバイオティクス / 腸内細菌 / ディスバイオシス |
研究実績の概要 |
我々のグループが開発した神経性やせ症(AN)の腸内細菌叢で再構成されたマウス(gAN)は、ANの体重増加不良ばかりでなく行動異常の特徴を再現していることから、ANの病態を検討する上で優れた動物モデルである。本研究では、このgANを用いて、ANの病態形成における腸内細菌の役割に加え、当科において入院治療を行うAN患者に対してプロバイオティクス・プレバイオティクスによる介入を行い、体重増加および精神症状に対する改善効果を検討する。2020年においては、新型コロナウイルス感染症のため研究活動全般に遅滞が生じたが、AN患者における血清中メタボローム解析に関する論文発表を行った。AN患者群では、様々なアミノ酸の濃度が低くなったが、尿毒症の毒素であるp-クレシル硫酸(PCS)、インドール-3-酢酸、フェニル硫酸濃度は、健常群と比較し、AN患者群で高かった。血清PCS濃度は、患者糞便中のClostridium coccoides数と有意に相関していたが、対照群では相関は認めなかった。また短鎖脂肪酸(SCFA)の行動に対する影響をマウスで検討した。具体的には、上部消化管で吸収されずに大腸に到達できるアシル化されたデンプンを含む特殊な食餌を作製し、雄BALB/cマウスに投与した。この方法により、大腸、盲腸において酢酸、酪酸、プロピオン酸の著明な増加を引き起こすことに成功した。下部消化管において酢酸を増加させる成分を含む食餌を摂取したマウスは、通常の食餌を摂取したマウスと比較し、不安様行動が減少していた。これらの結果は、下部消化管内における酢酸増加は、宿主の不安を減弱することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年2月までに、事前準備、マウスの作成と維持、プロトコール作成、メタボローム解析・短鎖脂肪酸測定、マウス管理協力者と実技を踏まえた検討会議を行い、令和3年3月までに、メタボローム解析・短鎖脂肪酸測定値の評価を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症による影響により遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、課題1の動物実験を遂行するとともに、AN患者で認められた血中アミノ酸欠乏の病態形成における意義について動物モデルを用いて検討する。課題2は、当施設で入院治療を行うAN患者を対象とし、ケストースによる体重増加の増強効果が得られるかどうかをランダム化比較試験によって明らかにする。予備実験の結果より、Bifidobacteriumを前投与することでgANマウスの体重増加率が改善することを確認しているため、本試験ではビフィズス菌をヒト腸内で増加させるケストースを用いAN患者への介入試験を実施する。①10歳以上、49歳以下の女性入院患者、②構造化面接において、アメリカ精神医学会が刊行する「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」のANの診断基準を満たす患者、③文書により同意が得られる患者、を対象とし、対象者数を各群20人、ベースラインおよびベースラインから12週間後の2点において評価を行う。主要評価項目は、エネルギー摂取量あたりの体重変化量(体重増加量/累積エネルギー摂取量)とし、副次的評価項目として質問紙による身体・精神症状評価および一般末梢血検査、腸内細菌解析、メタボローム解析を実施する。
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