研究課題/領域番号 |
20H04150
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
土屋 隆裕 横浜市立大学, データサイエンス学部, 教授 (00270413)
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研究分担者 |
冨田 尚希 東北大学, 大学病院, 助教 (00552796)
菅野 剛 日本大学, 文理学部, 教授 (10332751)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非標本誤差 / 自記式調査 / 回答者負担 / 回答誤差 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、非標本誤差の間の関係について、二つの観点から調査および分析を行った。 第一の観点は、回答者負担と測定誤差との関係である。複数の対象に対する評価を比較するとき、各対象についてそれぞれ同じ尺度を用いて評価を回答してもらう方法と、複数の対象を比較し、評価の差を回答してもらう方法とが考えられる。前者の方法は、全ての対象について同じ尺度を個別に用いるため、他の評価対象との関係に依存しない安定した回答が得られ、測定誤差は小さいと期待できる一方で、評価対象の数だけの回答数が求められる。それに対し後者の方法は回答数を減らすことができるため、回答者負担を軽減できる一方で、回答は評価対象の組み合わせに依存し、測定誤差を拡大させるおそれがある。本研究では、過去の状況と現在の状況の比較を素材として、インターネット調査を用いた比較実験調査を行った。その結果、評価の差を直接回答してもらうと、測定誤差が大きくなる可能性があることが示唆された。得られた成果は統計関連学会連合大会で発表した。 第二の観点は、回答方式と回答誤差との関係である。紙ベースの自記式調査では、調査票に回答を直接記入してもらうのではなく、回答用紙を別途用意することで、データ入力における負荷が軽減され、非標本誤差のうちの処理誤差が軽減されると期待できる。一方で、調査票に直接記入しないことで記入ミスが増え、非標本誤差のうちの回答誤差は増大するおそれがある。ただし一般に、どの回答が記入ミスなのかは特定できない。そこで本研究では、横浜市学力調査の解答を用いることで、記入ミスを特定し、それがどのような状況でどの程度発生するのか、また記入ミスをする者の特徴を明らかにした。その結果は日本統計学会春季大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の計画は、令和3年度に向けて予備的な調査研究を実施することであった。インターネット調査によるものとはいえ、複数の比較実験調査を行い、明確かつ安定的な結果を得ることができ、またその成果を学会で発表した。また、一般には記入ミスが生じてもそれをミスと判断することはできず、その特徴を分析することは難しい。本研究では、学力調査データを用いるという新たな着想を得ることで、これまであまり研究対象とされてこなかった記入ミスについて分析をすることができるようになった。また得られた成果の一部については既に学会で発表した。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、主に三つの視点から調査研究を行う。 第一は、令和2年度に明らかにした回答者負担と測定誤差の関係について、さらに研究を進展させることである。特に回答方式によって差が生じるメカニズムを、インターネット調査を用いて明らかにする。さらに令和2年度に実施した調査の回答者に再び回答してもらうことで、回答精度について多角的に情報を得る予定である。既に比較実験調査の内容については計画済みであり、得られた成果は学会等で発表予定である。 第二は、回答方式と回答誤差との関係について、記入ミスが生じる理由と、記入ミスを生じさせやすい回答者の特徴についてさらに明らかにすることである。令和2年度に利用した学力調査データは、入力から行う必要があったため、特定の学年の一つの設問に関する限られた学校のデータであった。令和3年度は利用する学力調査データの範囲を質・量ともに拡大することで、結果の一般化可能性をさらに高めることとする。 第三は、郵送調査を実施することである。令和2年度に明らかになった回答者負担と測定誤差との関係、および回答方式と回答誤差との関係について、他の調査モードや対象者についても一般化が可能なのかどうかを検証するため、郵送法による比較実験調査を実施する。なお調査実施は専門調査会社に委託する予定である。
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