研究課題/領域番号 |
20H04194
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
坂本 尚久 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (20402745)
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研究分担者 |
陰山 聡 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (20260052)
野中 丈士 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 技師 (80437293)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 可視化 / In-situ可視化 / 適応的時間サンプリング / 最適視点推定 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、大規模数値シミュレーションによって計算される数値データに対して、時間・空間・変数に関する3つの指標を設定することによって可視化すべき時空間領域を効率よく推定し、In-situ可視化における画像化時間の短縮だけでなく、数値データからの科学的知見を獲得するまでの時間を短縮することができるスマートIn-situ可視化を実現することである。 本年度は、時間を評価基準とした適応的時間サンプリング手法を開発し、空間を評価基準とした最適視点推定手法に着手した。 適応的時間サンプリング手法では、解析対象とする物理量の空間分布の時間変化を、時刻の異なる二つの確率分布の差として計算することで、状態変化の重要度として指標化した。そして、その大きさに応じて可視化する時間間隔を適応的に変更することで、シミュレーションにおいて興味がある重要な時空間領域の特徴を捉えつつ、可視化処理回数を大幅に削減することができた。実験では、本手法を歯茎摩擦音の発音シミュレーションに適用し、予め設定する評価時間間隔と画像削減率との関係を明らかにし、およそ半分程度の処理回数で重要な変化を可視化することに成功した。 最適視点推定手法では、可視化する時間領域において、対象とする物理量の空間変化を画像にとらえるために、投影画像の差に着目した視点選択手法の開発に着手した。本開発では、データを内包する立方体の各頂点に視点を設定し、その視点から可視化される画像間の差をもとに再帰的に空間分割を行い可視化することで、重要な変化が画像化できる重点領域を推定することができる手法を実装した。特に、本年度は、多視点In-situ可視化処理を効率よく実装するために、視線と視点の配置を自由に組み合わせることができるフレームワークを開発した。本フレームワークにより、次年度以降に予定している要素技術の統合および評価実験の効率化が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
適応的時間サンプリング手法の開発については当初の予定どおりの進捗であるが、最適視点推定手法においては、要素技術の統合に向けたフレームワーク化が想定以上に進んだこともあり、評価実験にやや遅れが見られる。しかし、問題となる遅れではなく、次年度も想定するとむしろ計画以上の進捗と考えることもでき、現時点でおおむね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、最適視点推定手法の評価実験を進めるとともに、開発したフレームワークを用いて適応的時間サンプリング手法との統合をはかる。また、数値シミュレーションによって計算される複数の物理量の関係に着目し、科学的知見の獲得につながる状態変化の推定するための手法の開発に着手する。この手法では、数値シミュレーション結果として出力される数値データ上の複数の物理量に対して、それらの時間変化を表す時系列データを対象とした因果の強さの指標化を試みる。この指標を計算するために、指定される時間区間内における複数の状態間での情報の流れを平均情報量(移動エントロピー)として数値化する手法の適用および改善を検討する。さらに、来年度からは、開発する要素技術およびフレームワークの、スーパーコンピュータ富岳への移植を進め、本格的な評価実験に向けた準備を開始する予定である。
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