研究課題
カンプトテシンはDNA-タンパク質の共有結合中間体を発生させ、DNA切断の3’にアミノ酸が結合した汚い末端のDNA切断である。ポリメラーゼεの校正エキソヌクレアーゼ活性を点変異で潰した変異細胞は、カンプトテシンに特異的に超感受性を示し、カンプトテシンに応答した複製停止が不良となっていることが判明した。本研究の目的は、ポリメラーゼεの校正エキソヌクレアーゼ活性が汚い末端の損傷部分で複製を停止させる機構を解明することである。これまでに、ポリメラーゼεの校正エキソヌクレアーゼ活性はPARP1という損傷応答タンパク質と共同して、複製停止時に複製フォークの反転を誘導することにより、損傷箇所での安全な複製フォークの停止を誘導していることを突き止めている。2022年度には、この反応機構をさらに追求し以下の2つの主要な成果を挙げた。(1)ポリメラーゼεの複製停止機能において、PCNAクランプのローダー複合体の1つCTF18が必須の役割を果たし、カンプトテシンによる損傷でのフォーク反転のみならず、Ara-Cというヌクレオシドアナログ製剤(複製のチェーンターミネーター化合物)に対する応答においても協働することを発見した。(2) ポリメラーゼεの校正エキソヌクレアーゼ活性を点変異体の示す、複製フォーク停止不良の表現型は、PARP1欠損細胞のそれと同様に、RECQ1ヘリカーゼの遺伝子欠損により正常化することを見出し、PARP1-Polε-CTF18によるRECQ1ヘリカーゼの阻害を介した現象である事を発見した。本研究は、これまで未解明であった断裂し汚い切断端をもつ鋳型鎖での複製フォークの反転現象に、新たなPolε-CTF18のプレイヤーを導入するとともに既報の知見と合わせて新規の分子機構を提唱するものである。さらに、本研究の知見は、抗がん治療におけるカンプトテシンの利用に有益は示唆を与える。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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