研究課題/領域番号 |
20H04398
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永田 淳嗣 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30218002)
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研究分担者 |
新井 祥穂 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40345062)
寺内 大左 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10728140)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インドネシア / アブラヤシ / オイルパーム / スマトラ / カリマンタン |
研究実績の概要 |
本研究は,1970年代末以降今日にいたる約40年間の,インドネシア外島部における農園産業の拡大という現象を,現代インドネシアの社会経済変動の全体像の中に位置づけ,その社会経済史的意義を実証的・理論的に明らかにすることを目的とする.具体的には,国土レベル,地方レベル,生産主体群レベルという相互に連動する3つのレベルから,農園産業の拡大を牽引してきたアブラヤシ農園産業を中心に,資本,土地,労働力の動員と再生産,再投入のあり方,およびその変化の解明を試みようとするものである. 2020年度,2021年度は,コロナ禍という予想外の事態の影響により,現地調査を行わない形で研究を進めることとしたが,今年度から事態の改善により現地調査を開始することとした.国土レベルの研究では,特にジョコ政権下での農園産業の動向に関わる政策環境変化に注目して,産業立地政策,所得政策,社会組織育成政策の各側面から,情報の収集・整理を行った.さらに,昨年度までに入手した衛星探査を利用した国土全体の人口分布データに関して,既存の統計データと照合するなどして,その精度の評価を行った. 地方レベル・生産主体群レベルの研究では,重点的な研究対象地域であるリアウ州と北スマトラ州において現地調査を行い,ジョコ政権下での政策環境変化が,農園産業拡大先進地域であるスマトラ島の北部・中部地域において,農園産業の動向や生産主体群の意思決定・行動にどのような影響を与えているかを検討した.これらの研究成果に関しては,インドネシアの農業経済学分野の拠点の1つであるジョグジャカルタ特別州のガジャマダ大学の研究者と交流を行い,インドネシア内島地域の動向との比較を中心に活発な議論を行った.さらにインドネシア外島部における農園産業拡大の最前線の1つとされる北スラウェシ州において,拡大のプロ・コントラ両面の要因を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までは,コロナ禍という予想外の事態の影響が長引き,インドネシア側研究総括・研究協力者のNgadiとの検討に基づき,現地調査の受け入れ態勢が依然十分でないと判断し現地調査を見送ってきた.今年度は,研究期間を2023年度まで延長した上で,申請時に重点的な研究対象地域として挙げた中から,現地との調整が比較的順調に進んだスマトラ島北部の北スマトラ州,同中部のリアウ州において,申請時計画を縮小した形ではあったが,地方レベル・生産主体群レベルに至る現地調査を実現することができた.一方で,インドネシアを対象とした社会科学研究においてほとんど利用されてこなかった衛星探査を利用した人口分布データの活用に関して検討を進めることができ,既存の様々なデータベースや現地調査と紐づけた分析の見通しを得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,コロナ禍の影響で見送ってきた本研究計画の中核となる現地調査,ならびにインドネシアの研究機関・研究者との交流を進めることができた.しかしながら申請時に重点的な研究対象地域として挙げた中で,カリマンタン島の東カリマンタン州,西カリマンタン州に関しては現地調査ができていない.これらの地域の現地受け入れ態勢に関しては概ね見通しを得ることができたので,最終年度となる次年度は,カリマンタン島での調査に力点をおくことにしたい.合わせて,インドネシア外島部全体を視野に入れた社会経済史の再構築という目標を達成するための,他地域の調査のフォローアップを行うと同時に,インドネシア側研究総括・研究協力者のNgadiが所属するジャカルタの National Research and Innovation Agency (NRIA) を拠点に,諸研究機関との交流,研究成果に関する討論・とりまとめを進めていくこととする.
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