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2020 年度 実績報告書

医療実践としての人工妊娠中絶の新たなフレイム構築―出生前検査とのかかわりから

研究課題

研究課題/領域番号 20H04449
研究機関明治学院大学

研究代表者

菅野 摂子  明治学院大学, 社会学部, 研究員 (60647254)

研究分担者 佐野 敦子  東京大学, 情報学環・学際情報学府, 特任研究員 (00791021)
齋藤 圭介  岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60761559)
石黒 眞里  明治学院大学, 社会学部, 実験助手 (60833126)
柘植 あづみ  明治学院大学, 社会学部, 教授 (90179987)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード出生前検査 / 人工妊娠中絶 / インタビュー調査 / 医療者 / 女性
研究実績の概要

本研究初年度である2020年度には、まず、中絶の基本的な概念を理解し、現状を把握するために、産婦人科医と人文社会学系の中絶研究者から情報を収集した。産科医療の点から人工妊娠中絶について学ぶために女性の権利や生命倫理に精通している産婦人科医にご講義頂き、続いて、日本の人工妊娠中絶の現状と課題について、特に技術的な面を長年指摘してきた中絶研究者にゼミナールを開催して頂いた。それと共に、WHOの発行している中絶のガイドライン(翻訳本)を各自精読した。また、中絶を希望する妊婦の多くが利用するであろう、産婦人科のHPを調べ、人工妊娠中絶の手技や対応がどのようになされているか、また手術の時期などを調べた。
こうした学びをもとに、本研究で医療者と女性に何を尋ねるべきか、インタビュー項目について検討し、学内の倫理審査を受けた。その間、インタビューデータの質的分析を行うソフトウェアMAXQDAの講習会にも参加した。
倫理審査を通った後、インタビューのリクルートを始め、女性2名、産婦人科医2名、助産師1名にインタビューを行った。女性2名については、いずれもNIPTを受検しており、ひとりは出産する意向があったことから、遺伝カウンセリングは障害のある子どもの療育などについて尋ねたが、満足のいく説明は得られなかった。もう1名は、夫婦の意見に齟齬があったが、結果が陰性だったため、夫婦関係が悪化することはなかった。この2名は、NIPT受検において決して珍しい事例ではない。また、産婦人科医は開業している若手男性医師と、総合病院勤務の女性ベテラン医師という対照的な2名であった。開業医は中絶を中心に、病院勤務の医師は出生前検査を中心に語ったので、比較するのは難しかったが、典型的な事例でもあることから、今後リクルートを進める上で重要だと思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナの蔓延により、医療者へのインタビューは当初予定した人数を下回ったものの、女性2名、また市民活動で知り合った助産師1名からも協力を得られたため、全体としては順調に進んだものと思われる。
また、インタビューに先立って、研究員がそれぞれ馴染みのある地域の産婦人科のホームページを精査し、また関心の高い者は実際にその場所を見に行くなど、実査に近いレベルで概要を把握できたことは、次年度に調査を進めるにあたって、大きく役立つものと確信する。

今後の研究の推進方策

2020年度に実施した東京都内の産婦人科のホームページ調査は、限りはあったが、押しなべて積極的に中絶の広告を出している施設は多くはなく、特に中期中絶についてはごく一部の施設しか行っていないように見えた。次年度は、一部の地域を深く調べるのではなく、できれば全国の産婦人科のホームページをチェックし、量的に検証していく予定である。
医療者については、対照的な2名の医師をインタビューし、一定の知見が得られたため、次年度に向けてリクルートを進めている。できるだけ多様な属性や考え方の医師(あるいは中絶や出生前検査に関心の高い助産師)をリクルートする予定でいるため、知り合いの医師等のツテを頼って進めていくしかない状況下で、適切なリクルートができるかどうか、やや不安である。コロナの感染者が急激に減っているわけではないなかで、病院勤務の男性医師や胎児診断に積極的な医師、逆に胎児診断に消極的な医師等のバリエーションを念頭に置いてリクルートをしていきたい。助産師については、当初は予定していなかったが、当該年度の助産師のインタビューによって、この問題に深くかかわったり、問題意識のある助産師が少なくないことがわかった。医師よりも優先順位は下がるが、調査に協力して頂けそうな助産師には、積極的に接触していきたい。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 6件、 査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 出生前検査と遺伝カウンセリング: 過去~現状~未来に向けて2021

    • 著者名/発表者名
      山中 美智子、吉橋 博史、本田 まり、水野 誠司、柘植 あづみ
    • 雑誌名

      聖路加国際大学紀要

      巻: 7 ページ: 76-85

    • DOI

      10.34414/00016401

    • 査読あり
  • [雑誌論文] メルケル政権下の男女平等報告書とドイツ初の男女平等戦略―時代の転機を次の社会のデザインにつなげるには―2021

    • 著者名/発表者名
      佐野敦子
    • 雑誌名

      立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科

      巻: 19 ページ: 16-29

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 国立女性教育会館におけるeラーニング事業 第4期中期計画の取組と今後の展開にむけた課題2021

    • 著者名/発表者名
      佐野敦子
    • 雑誌名

      NWEC実践研究 「学校教育とジェンダー平等」

      巻: 11 ページ: 186-202

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 特集:デジタル化はジェンダー平等に寄与するか「特集にあたって」(巻頭言)2020

    • 著者名/発表者名
      菅野摂子
    • 雑誌名

      国際ジェンダー学会

      巻: 18 ページ: 5-7

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Data Reporting as Care Infrastructure: Assembling ART Registries in Japan, Taiwan, and South Korea, East Asian Science, Technology and Society2020

    • 著者名/発表者名
      Chia-Ling, Wu, and Jung-Ok, Ha, Azumi Tsuge
    • 雑誌名

      An International Journal, Duke University Press,

      巻: 14.1. ページ: 35-59

    • DOI

      10.1215/18752160-8233676

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 性と生の人権としての性教育をめざして2020

    • 著者名/発表者名
      柘植あづみ
    • 雑誌名

      児童心理学の進歩

      巻: 59 ページ: 205-210

  • [雑誌論文] ジェンダーからみたAI戦略 -ドイツのデジタル変容とジェンダー平等推進-2020

    • 著者名/発表者名
      佐野敦子
    • 雑誌名

      国際ジェンダー学会誌

      巻: 18 ページ: 39-63

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] E-LEARNING AND GENDER A PROPOSAL FOR THREE TYPES OF COLLABORATION2020

    • 著者名/発表者名
      Atsuko,Sano
    • 雑誌名

      The Digital Transformation Implications for the Social Sciences and the Humanities, Miscellanea,

      巻: 88 ページ: 20-23

  • [雑誌論文] 男性の生殖経験とは何か ――育児に積極的にかかわっている男性へのインタビュー調査から2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤圭介
    • 雑誌名

      年報社会学論集

      巻: 33 ページ: 157-168

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 第9回 学生にとって,社会調査の魅力とは何か2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤圭介
    • 雑誌名

      Journal of the Atomic Energy Society of Japan

      巻: 62 ページ: 294~294

    • DOI

      10.3327/jaesjb.62.5_294

  • [雑誌論文] 第10回 質問紙調査の魅力と落とし穴2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤圭介
    • 雑誌名

      Journal of the Atomic Energy Society of Japan

      巻: 62 ページ: 401~401

    • DOI

      10.3327/jaesjb.62.7_401

  • [雑誌論文] 第11回 社会調査とプライバシーの微妙なバランス2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤圭介
    • 雑誌名

      Journal of the Atomic Energy Society of Japan

      巻: 62 ページ: 606~606

    • DOI

      10.3327/jaesjb.62.10_606

  • [雑誌論文] 研究例会 理論という実践――ジェンダー理論は社会正義を語れるか(企画趣旨文)2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤圭介
    • 雑誌名

      関東社会学会ニュース

      巻: 156 ページ: 4-5

  • [学会発表] Japan’s New Law on Assisted Reproductive Technology’: Why Did it Take Almost 20 years for Japan to Approve its First Law Regarding ART?2021

    • 著者名/発表者名
      TSUGE, Azumi
    • 学会等名
      Sci-Tech Asia Pluralizing the Anthropocene Colloquium
    • 国際学会
  • [学会発表] リスク社会において“病む”ということ~不確実性の管理をめぐる患者の語り2020

    • 著者名/発表者名
      菅野摂子、佐藤(佐久間)りか、磯野真帆
    • 学会等名
      国際ヘルスヒューマニティ学会
    • 国際学会
  • [学会発表] 出生前検査と遺伝カウンセリング―社会的・倫理的な視点から―2020

    • 著者名/発表者名
      柘植あづみ
    • 学会等名
      日本先天異常学会第60回学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] I choose not to undergo prenatal tests to avoid having to make a hard choice,2020

    • 著者名/発表者名
      TSUGE, Azumi
    • 学会等名
      Association for Asian Studies in Asia Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 『社会学評論』は高嶺の花か?――査読誌に投稿する執筆者の属性とその趨勢2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤圭介
    • 学会等名
      日本社会学会第93回
  • [学会発表] 社会学への冷笑と羨望――隣接分野からのまなざし(司会)2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤圭介
    • 学会等名
      日本社会学会第93回
  • [学会発表] 理論という実践――ジェンダー理論は社会正義を語れるか(司会)2020

    • 著者名/発表者名
      齋藤圭介
    • 学会等名
      関東社会学会研究例会
  • [図書] 「生命倫理と母子保健」『子ども家庭福祉―子ども・家族・社会をどうとらえるか 』2020

    • 著者名/発表者名
      垣内国光、岩田美香、板倉香子、新藤こずえ、菅野摂子、ほか
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      生活書院
    • ISBN
      978-4-86500-121-1

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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