本年度は、昨年度までに構築した仮説的なモデルからの予測されるパーソナリティと行動との関係が、実際の日常生活の場面でもみられるかを質問紙調査により検証した。 セクション1では、他者の非言語的な行動とパーソナリティに関する社会的知識を調べた。具体的には、非言語的行動40項目について、そのような行動をとる人は、Big fiveの5因子それぞれにどの程度当てはまるかを1260名の回答者が評価した。その結果、パーソナリティタイプ研究で報告されるResilient type、すなわち、外向性、協調性、勤勉性、経験への開放性が高く、神経症傾向が低いと判断されるような行動項目として8種類が特定できた。その中には、頻繁で長いアイコンタクト時間などの、眼球運動に関連した行動も含まれていた。また、Anti-resilientと呼ばれる、外向性、協調性、勤勉性、経験への開放性が低く、神経症傾向が高いと判断されるような行動項目が16項目特定された。これらには、頻繁な視線移動、低頻度で短時間のアイコンタクトなどの眼球運動に関連した行動も含まれていた。 セクション2では本人が自覚する自らの行動傾向と自らのパーソナリティの関係を調べた。その結果、個人の非言語的行動は4つの因子に分かれることが明らかになり、それぞれの因子得点はパーソナリティスコアとも異なる相関を示した。例えば、アイコンタクトの長さは他の対人関係に関連する行動と同じ因子に含まれ、それらは外向性、協調性と高い相関を示した。また、頻繁な視線移動は、神経質で不誠実な印象を与える行動と同じ因子に含まれ、それらの因子得点は、神経症傾向と正の相関、勤勉性と負の相関を示した。 本調査の結果は、昨年度までの実験で得られた結果とも一致することから、日常行動に関する知識や自己認識においてもパーソナリティと眼球運動の関連が明らかとなった。
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