研究課題/領域番号 |
20H05644
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清水 克哉 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (70283736)
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研究分担者 |
河口 沙織 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (00773011)
高野 義彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA主任研究者 (10354341)
石河 孝洋 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (40423082)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 高温超伝導 / 超伝導デバイス / 超高圧 |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究が目指す「室温動作超伝導デバイス」の実現にむけ、より高温での水素化物超伝導体の探索と、高圧力で動作する超伝導デバイス開発を同時に進めてきた。これは、引き続き、「超伝導転移温度はどこまで上げることができるのか」という学術的な問いと、「高圧のままで使う」という高圧力を安定に保持して高温超伝導を利用するための研究である。代表者清水の実験技術を基盤軸に、石河は理論物性予測、河口は超高圧下結晶構造解析、高野はデバイス化をそれぞれ分担して、開発研究を行った。 現在は論文が撤回されているが、研究期間中に海外のグループから室温を超える、またはほぼ室温の超伝導体の発見の報告がなされた。そのため、我々はそれらの追試実験を行い、それらの真偽を検証した。我々を含め世界中の高圧超伝導研究者に追試に成功した例はなく、残念ながら時間をふくめ多くの研究資源を消費した。 海外の理論計算では室温に迫るまたは室温以上の水素化物がいくつか提案されている。我々も第一原理計算を用いて3元系水素化物超伝導体の探索を進め、統計解析や機械学習に利用できるようデータベース化を行った。中でもルテチウム系水素化物では、カルシウムを加えた含むLu-Ca-Hの3元系水素化物は100 GPa付近で高いTcを持つと理論予測された。そこで、ルテチウムとカルシウムの混合物を水素源のアンモニアボランとともに封入し、3元系水素化物の合成を試みた。しかし、高圧力下結晶構造解析と超伝導計測により、ルテチウムの水素化物(LuH3)のみが合成され3元系水素化物の合成には至らなかったことがわかった。 超伝導体の転移温度上では電気抵抗が急激に変化することを利用した、超伝導端光センサーを試作した。ランタンを用いて約10 GPaを印加し、冷凍機中の超伝導ランタンにレーザーを照射し、電気抵抗変化によって感度良く光を検出していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論計算により提案される高温超伝導水素化物が、予測された温度または圧力を設定しているにも関わらず合成が成功しない例が極めて多い。これは我々だけでなく、多くの実験グループがこの問題に直面している。これは未だ理論計算の精度が十分でないことに加え、合成の温度圧力経路上に存在するより安定な構造で合成が終着してしまうことによると考えられる。 また、概要にも示した通り、室温超伝導の誤った報告に対応するため、それらの検証実験に多くの時間を費やした。ただ、我々の追試結果は他の研究者との結果とあわせて、重要な実験的証拠として我々の実験の信頼性が評価された。 ダイヤモンドアンビルが破砕する問題は、合成圧力を低下させることで、やや減少したが解決には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、室温または室温に迫る水素化物超伝導体の探索を推進するが、これまでに理論予測された高温超伝導水素化物がその予測通りに合成されるものは多くない。合成経路の検討に加え、合成前の物質選択にも取り組む計画である。つまり、3元系水素化物(A-B-H)の場合、A、Bの2つの元素の合金を出発物質とするほか、Aの水素化物とB、AとBの水素化物なども採用する。 高圧超伝導のデバイス化においては、超伝導転移端センサーの電極をより微細に作成して感度を向上させる。また、SQUIDまたはジョセフソン結合にも取り組む。 最終年度として、デバイスに用いる高温超伝導水素化物を決定し、デバイス形状への加工と動作検証を行う。
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備考 |
本研究の成果や活動状況を発信
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