研究課題
試験管内で人工アクチベーターGAL4融合VP16タンパク質(G4-VP)とHeLa核抽出液(NE)をGal4結合配列とプロモーター配列を持ったテンプレートDNAを混合反応すると、コヒーシンローダーNipbl/Mau2を含むメディエーター、基本転写因子、RNAポリメラーゼII(RNAPII)を含む転写前開始複合体PICの形成でき、ATPや転写阻害を用いることで、RNAPIIの活性化や制御因子の会合促進反応の検出を可能にした。今回、ATPase活性反応を中間段階で停止できる薬剤AlFxを用いることで、Brd4、DSIFやNELFなどの伸長や停止促進を制御する因子及びこれまで観察が困難であったコヒーシンの会合の促進が観察できることを発見し、転写活性化移行への中間複合体の検出に成功した。コヒーシンをNEから除去すると、この複合体形成が阻害され、CDK9阻害剤で処理することでこの効果は抑制された。試験管内の転写反応では、Nibplは、p-TEFbと強く相互作用することやBRD4とAFF4の各複合体は、独立にp-TEFbと結合し、機能している結果を得た。このことから、コヒーシンローダー及びコヒーシンは、p-TEFbに対して抑制的に働く活性を持ち、転写活性化の段階を厳密に制御するために必要であることが予想される。この試験管内の反応で見られた結果は、CdLsやCHOPsの遺伝病患者でこれまでに見られた一部の遺伝子における転写伸長の促進、RNAPIIのリン酸化の増加を説明するものであり、これらの疾患病態をよく説明する。
2: おおむね順調に進展している
現在までのところ、コヒーシン、コヒーシンローダーが転写伸長反応への移行段階で転写を制御しているという当初のモデルとは矛盾する結果は得られていない。当初掲げている4つのサブプロジェクト、すなわち(1) 試験管内再構成を用いたエンハンソソームにおけるコヒーシン機能の解明。(2) 核内エンハンソソームの高解像度可視化を通じたコヒーシンの機能解析。(3) エンハンソソームのタンパク質性・非タンパク質性構成因子の網羅的同定。(4)コヒーシンの修飾とエンハンソソーム制御への関与、についてはそれぞれ順調に進展しており、ATPase活性が転写開始反応に抑制的に機能していることを示すデータを得ている。今後、一体、「何が」コヒーシンローダーをリクルートするのか、そして、コヒーシンのATPase活性の転写における役割は何なのかを明確にしていく予定である。
当初の予定と変更はない。in vitro系を中心に据え、より詳細かつ網羅的な転写開始段階の複合体の解析を行うとともに、特にCdLSとCHOPsといったコヒーシン病について、培養細胞を用い病態再現を目指すことを目標としていく。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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