日本哺乳類学会が出版する国際学術雑誌Mammal Studyに掲載された「Comparative morphology of the male genitalia of Japanese Muroidea species」が,日本哺乳類学会論文賞を受賞した. また,ネズミ科ネズミ亜科において,側乳頭突起が短いハツカネズミとカヤネズミの雄性外生殖器を,陰茎骨体,正乳頭突起,側乳頭突起の位置と大きさに着目して形態学的に比較した.側乳頭突起の海綿体洞はハツカネズミで発達していたが,カヤネズミでは発達していなかった.また,陰茎に占める陰茎骨体の長さは2種でほとんど変わらないが,ハツカネズミで陰茎の包皮から正乳頭突起が突出する割合が高く,陰茎骨体がより遠位に位置していた.そのため,側乳頭突起が短くても,発達した海綿体洞に血液が溜まり,可動することにより陰茎遠位部の膨張に寄与すると考えられた.得られた成果は国際学術雑誌Zoomorphologyに投稿した. さらに,キヌゲネズミ科キヌゲネズミ亜科の雄性外生殖器の形態比較を行った.すべての種で側乳頭突起に指状突起が形成され,陰茎骨体と指状突起の形態が種ごとに異なった.また,側乳頭突起の基部に棘があることをはじめて明らかにした.得られた成果は日本哺乳類学会2022年度大会,三重大学(オンライン開催)で「ハムスター(キヌゲネズミ科キヌゲネズミ亜科)における陰茎の形態および組織学的特徴」と題するポスター発表をした. これらの研究成果をまとめ,京都大学大学院理学研究科生物科学専攻博士論文「Comparative and functional morphology of male external genital organs in Muroidea rodents」を執筆し,学位を取得した.
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