研究課題/領域番号 |
20J21638
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長戸 光 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 教育哲学 / エピステモロジー / ベルクソン / ベルナール / 生命 / 再認 / 復興教育 / 総合的な学習の時間 |
研究実績の概要 |
2020年9月12日に、「『創造的進化』における「生命的な機械」の問題―クロード・ベルナールの未完の生命の生成論―」と題した研究発表を日仏哲学会にて行なった。クロード・ベルナールの『動植物に共通する生命現象』の読解を通して、19世紀生物学において17世紀以来の「機械」の観念が変質したことを示し、「生命的な機械(machine vivante)」という生理学上の概念が「生命の製作の歴史」を開示するということを明らかにした。 また、2020年10月17日に、「ベルクソンにおける習慣と純粋記憶の生成論―再認の外部はあるか?―」と題した研究発表を教育哲学会で行なった。本発表では、習慣論を「再認」という問題系の中心に位置付け、習慣の構築と解体という「再認」のプロセスにおいて、知覚と記憶が「同時に形成される」こと、そして再認による過去の凝縮が、「現在の記憶」を絶えず忘却させるということをベルクソンの著作から読解した。 最後に、2020年度を通して、東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センターにおける海洋教育基盤研究プロジェクト「津波被災地域の中学生の学力・学習意欲の向上―大学生との双方向的な海洋教育を軸に」に参加し、複数回福島県の諸地域でフィールドワークを行ない、相馬市の中学校と交流を行なった。本プロジェクトの成果として、共同執筆論文「津波被災地域の現状を踏まえた「総合的な学習の時間」の開発―ふたば未来学園の復興教育に着目して―」を『東京大学大学院教育学研究科 基礎教育学研究室 研究室紀要』に投稿し、査読を経て掲載が決定した(2021年7月刊行予定)。「地域を学ぶことが子どもの人間形成にとっていかなる意味を持つのか」という重大な教育上の問いを、震災後の復興教育の事例、とりわけふたば未来学園の「未来創造型教育」の事例を分析することで浮き彫りにしたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会発表2件、査読論文1本の成果を出すことができたことは大きな成果であるが、日仏哲学会に投稿した論文の査読の結果、不採用となった。論文全体の主張・テーゼを補強する論証が不十分であるという評価であり、17-18世紀と19世紀の間に走る生物学史上の断絶とはいかなるものであるか、より細密な研究が求められた。
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今後の研究の推進方策 |
上記の課題について、本研究の重要な先行研究となる文献(Charles Wolfe, Philosophie de la biologie avant la biologie)を見つけ、現在精読している。論文のフォーカスをクロード・ベルナールに絞った上で、ベルナール生命観の核心を、先行する世紀の生物学史の流れと比較することで見極める。そして、再度2021年12月に日仏哲学会に投稿する予定である。 また、今年度より、東京大学のバリアフリー教育開発研究センターから支援を受けたプロジェクト「生活に埋め込まれた「差別」に向き合う教育実践の分析-水俣芦北公害研究サークルに焦点を当てて-」に、共同研究者として関わることが決まった。また昨年度から継続して、福島県相馬市におけるフィールドワーク、総合的な学習の時間の開発に携わる。教育実践と哲学研究の架橋の模索を、本年度は昨年以上に行っていく。
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