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2020 年度 実施状況報告書

西欧十三世紀における勇気と節制の概念

研究課題

研究課題/領域番号 20K00005
研究機関京都大学

研究代表者

周藤 多紀  京都大学, 文学研究科, 准教授 (50571733)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード中世哲学 / 注解 / 校訂
研究実績の概要

本研究の目的は、ディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』の校訂と研究を通して、十三世紀後半の哲学的倫理学の展開を明らかにすることにある。同書は、当時書かれたアリストテレスの『ニコマコス倫理学』注解のなかで、オックスフォード大学学芸学部で講義されたことが確実な唯一の作品である。本年度は、昨年度中に完成したディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』第二巻の校訂版および解説について、投稿した欧文雑誌の査読者のコメントにしたがった修正を行った。その過程で、残存する三つの写本の関係について、より精確と考えられる見解を得ることができた。さらにディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』第三巻の意志的行為について論じた部分(第一問から第三十二問)の校訂版を作成した。校訂版作成と平行して、同時代に書かれた『倫理学注解』(複数)やトマス・アクィナスの『神学大全』との比較研究をすすめた。比較研究の成果を英文にまとめて校訂版の解説とした。
現在出版されている書籍のなかで中世哲学についての最適の入門書であると考えられるJohn Marenbon のMedieval Philosophy: A Very Short Introduction (Oxford University Press, 2016)を訳出した。また同訳書に、訳注や補足図、解説を用意した。同訳書は今秋『哲学がわかる 中世哲学』として岩波書店から刊行される予定である。
また、過去~現在の世界の中世哲学研究を振り返り、西洋哲学史研究の方法論について反省的考察を行った。考察の結果について、文学・哲学・歴史学の研究者を構成員としている「人文学の方法論研究会」で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

コロナウイルス感染拡大により、授業開講が遅れたり、夏期大学院入試等が中止されたりしたため、通常よりも研究時間をとることが可能になった。同時代の『倫理学注解』との比較研究を完成させるにはフランス国立国会図書館での写本の閲覧が必要となるが、当分の間は、比較研究に関しては、国内で可能な限りですすめることにする。

今後の研究の推進方策

今年度中の出版が予定されている、ディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』第二巻の校訂版について、校正作業にあたる。また今年中に出版が予定されている、マレンボン『中世哲学』についても、校正作業にあたる。
すでに作成を終えた、ディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』第三巻第三十二問までについて、作成した校訂版をあらためて点検し、今年度中に報告書(第一部)としてまとめる。まだ作成していない、ディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』第三巻第三十三問以降について、校正版の作成および関連研究を進める。
関連研究のひとつとして、とくにトマス・アクィナスの modus (様態・節度)概念の研究をすすめる。研究成果について今秋の中世哲学会で発表する。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルス感染拡大により、計画していた海外での写本調査や国内学会参加のための出張を実施しなかったため、旅費の使用がまったくなかった。代わりに関連研究や翻訳のために必要な書籍を購入したが、計画していた旅費の額には至らなかった。未使用額については、今年度作成する予定の報告書(その1)の作成のために必要とされる諸費用にあてる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Johannes de Dinsdale, Quaestiones super Librum Secundum Ethicorum2021

    • 著者名/発表者名
      Taki Suto
    • 雑誌名

      Recherches de Theologie et Philosophie Medievales

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] 西洋哲学史研究の方法 西洋中世哲学史研究からの問題提起2021

    • 著者名/発表者名
      周藤 多紀
    • 学会等名
      人文学の方法論 第二回研究会

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公開日: 2021-12-27  

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