現存する三つの写本を基にして、ディンスデールのヨハネスの『倫理学註解』第三巻の批判校訂版を完成させた。校訂の作業とともに、ヨハネスの註解とトマス・アクィナスの『倫理学註解』『神学大全』や同時代のパリ大学学芸学部教師による『倫理学註解』との比較研究を進め、その成果を2022年7月に国内研究会で発表した。また「観想的生」と「活動的生」に関する彼らの考え方の共通点と相違点をまとめて、2022年8月にパリで開催された国際中世哲学会大会のセッション「中世の倫理学註解における革新的思想」で口頭発表(英語)をして、同分野の研究者との意見交換をはかった。学会終了後、発表原稿を推敲し、パリの学芸学部教師の『倫理学註解』の関連箇所の校訂版を付録した論文として学会論集に投稿した。 ヨハネスの『倫理学註解』が大きな影響を受けている、トマス・アクィナスの思想で重要な役割を果たしている「モドゥス」の概念について考察を深めて、国内学会で発表するとともに、数本の論文を執筆・発表した。 また、2022年10月に開催された関西哲学会大会の共同討議「徳について」で司会をつとめ、古代ギリシアや現代英米圏における徳理論についても見識を深めた。 さらに2020年度にジョン・マレンボンの中世哲学入門書(A Very Short Introduction: Medieval Philosophy)を訳出し、2023年2~3月に校正を行い、出版を実現させた(2023年5月刊行予定)。
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