研究課題/領域番号 |
20K00025
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森 一郎 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (00230061)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 世界への愛 / ハイデガー / アーレント / ニーチェ / 政治哲学 / 三木清 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度である令和2(2020)年度は、コロナ禍に見舞われた年ではあったが、研究代表者森の研究計画はおおむね順調に進んだ。 まず、2020年3月に単著『核時代のテクノロジー論――ハイデガー『技術とは何だろうか』を読み直す』を現代書館から出版したのに続いて、2020年11月にこの年二冊目の単著『ポリスへの愛――アーレントと政治哲学の可能性』を風行社から出版した。いずれも、本研究課題に掲げている「世界への愛」プロジェクトの一環をなす積年の研究成果であり、まさに現代における政治哲学の可能性を追究したものである。『ポリスへの愛』は、アーレントの思考を導きの糸としつつ、古今東西の思想的遺産を再発見する「真珠採りの解釈学」を駆使してみせた独創的業績である。 2021年3月には、編著『近代日本思想選 三木清』をちくま学芸文庫として刊行した。近代日本を代表する哲学者の一人、三木清の哲学の全貌を伝えるアンソロジーを個人編集し、編者による解説と年譜を付した。哲学と政治の間を生き抜いた哲学者の活動的生を現代に甦らせることは、現代日本における政治哲学の可能性をひらくことに資する。 論文としては、2020年6月刊の『理想』704号に「死んだら終わりか?」を、2020年11月刊の『ひらく④』に「コロナ禍はどこまで危機なのか――反時代的試論」を、2021年2月刊の『理想』705号に「学問と生――ニーチェに学んで戦いを生きる」を、それぞれ掲載した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「世界への愛」のかたちとしての「ポリスへの愛」についての単著をまとめることは、森の年来の課題にして本研究の第一目標であった。それを初年度に達成できたことに、手ごたえを感じている。 哲学者三木清の膨大な作品群の中から、エッセンスを集めて一冊の文庫として刊行できたことも、今年度の大きな成果であった。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、ハンナ・アーレントの第二の政治哲学的主著『革命論』の新訳刊行に全力を注ぐ予定である。従来は英語版からの邦訳『革命について』が読まれてきたが、ドイツ語版から新たに訳出し、新しい光を当てたいと思う。
|