研究課題/領域番号 |
20K00045
|
研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
森 芳周 阪南大学, 経営情報学部, 准教授 (70367928)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 死亡胎児 / 死産児 / 流産児 / 遺伝子検査法 |
研究実績の概要 |
2020年度に新型コロナウイルス感染症の影響で延期していた、アジア圏の死亡胎児の研究利用の調査を、2021年度に外国出張も含めて実施することを予定していたが、研究計画を変更することになった。なお、英語圏の死亡胎児の研究利用の調査については予定通り実施することができた。その他の研究も含めて2021年度の研究実績は次のとおりである。 (1)死亡胎児の研究利用に関して、他機関が主体となっている研究グループに参加し、アメリカ、欧州諸国に関する法令や同意手続き、日本における死亡胎児の研究利用の状況に関する知見を得た。 (2)過去に調査したスイスの遺伝子検査法の全面改正が2018年にあり、その改正の動向を調査し、論文を執筆した。全面改正後のスイスの遺伝子検査法では、死亡胎児の遺伝子検査に関する規定に大きな変更はなかったが、NIPTの普及に伴い、胎児の健康を直接的に侵害することのない性質について、刑法上の中絶期限である妊娠12週以前に、出生前検査の結果を告知することを禁ずる規定が加えられた。 (3)死亡胎児の取り扱いや家族のケアに関して、ドイツ語圏、英語圏諸国の法令や支援団体の取り組みの調査を行った。現状はまだ十分にまとめられていないため一例をあげるにとどめるが、ニュージーランドでは妊娠20週以降、又は胎児の体重が400g以上の場合は埋葬の義務があるが、そうではない場合には埋葬義務は生じない。現在も引き続き、死亡胎児の埋葬義務などについて他の英語圏諸国の法令を調査している。この他に、スイス連邦政府が2017年に「流産児の身分登録手続きの改善」という報告を発表しており、現在はその内容に関して論文としてまとめているところである。 以上、2021年度の研究実績の概要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度当初は、英語圏・アジア圏各国における死亡胎児の研究利用、死亡胎児の取り扱い(埋葬等)に関する法令の調査を実施し、また近隣のアジア圏については現地の調査も計画していた。しかし、海外への出張には制約もありアジア圏についての研究は実施できていない。ただし、英語圏における死亡胎児の研究利用に関しては、実際の手続きについての知見も得ることができ、法令の調査も順当に進捗している。過去の研究のアップデートも進めており、スイスの遺伝子検査法の改正状況について論文を発表できた。また、スイスの移植法およびスイス連邦政府の「流産児の身分登録手続きの改善」に関する報告書についての論文の発表を準備している。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、これまで実施予定であって実施できなかった研究課題に取りかかり、さらに研究の総括も実施する。ただし、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響によって実施できないものも出てくると考えられる。そのため、基本的には文献調査を中心に進めることとし、可能であれば出張を実施して現地調査なども実行したい。以上のことから、2022年度は主に以下のことに取り組む。 1. 2021年度中に調査を行った、スイス移植法の改正動向、スイス連邦政府の「流産児の民事登録手続きの改善」についての報告書についての論文を執筆し、2022年度又は2023年度中に発表する。 2. アジア圏、英語圏諸国に関して、死亡胎児の取り扱いについての法令・指針に関する調査を引き続き実施し、可能であれば論文の執筆を行う。なお、一部の国については、上記のスイス連邦政府の報告書にも記載があるが、ペリネイタルロスケアの観点から、死産児の身分登録だけでなく、流産児の身分登録を可能にするような傾向にあることがわかっている。 3. 2021年度に実施予定であった、アメリカの中絶規制と死亡胎児の処分に関する規制の関連を調査する。最近になって、連邦最高裁が中絶の厳格化の方向に舵を切るのではないかとの報道がなされている。ケアの観点からだけでなく、中絶規制の強化との関連での死亡胎児の処分のあり方についても十分な検討が必要になるだろう。 以上が、2022年度に実施を予定している研究である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は出張を控えたために旅費の使用が0になっている。また、学会も全面的にオンラインであるために学会参加のための旅費が不要になった。今後も海外調査が実施できない可能性もあるために、その準備のための物品購入もしていない。 2022年度については、国立国会図書館、学会参加などの国内出張をある程度入れることを検討している。また、生命倫理関連の図書の購入、論文執筆の際の英文校正などで物品費及びその他の費目の支出が大幅に増える見込みである。
|